総則
平成3年に制定された「育児休業等に関する法律」に、介護休業に関する規定も
平成7年に追加され現在に至る
■目的(法1条)
子の養育又は家族の介護を行う労働者等に対する支援
雇用の継続及び再就職の促進
職業生活と家庭生活との両立
福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に資する
■基本的理念
子の養育又は家族の介護を行う労働者等の福祉の増進
職業生活の全期間を通じてその能力を有効に発揮して充実した職業生活を営む
育児又は介護について家族の一員としての役割を円滑に果たす
育児休業
■育児休業の対象労働者
1.1歳未満の子を養育する場合
(1)引き続き雇用された期間が1年以上の者
(2)1歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれる者
(1歳到達日から1年を経過するまでの間に、その労働契約が満了し、かつ、
労働契約が更新されないことが明らかである者を除く)
2.育児休業の取得回数
原則として同一の子について1回とされている
しかし、次の場合は再度取得が可能
(1)出産後8週以内の父親の育児休業に関する特例
(2)特別な事情がある場合
3.1歳6か月未満の子を養育する場合
(1)1歳到達日において育児休業をしている場合
(2)雇用の継続のために特に必要と認められる場合
4.労使協定による例外
事業主は、労働者から育児休業申出があったときは、それを拒否できない
ただし、労使協定により次の場合はこの限りではない
(1)引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
(2)申出があった日から1年以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
(1歳6か月までの子の場合6月)
(3)1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
■育児休業の申出
申出は、育児休業開始予定日及び育児休業終了予定日を明らかにし、原則として
開始予定日の1月前の日までにしなければならない(1歳6か月のこの場合は2週間
前)
1.事業主による育児休業開始予定日の指定
育児休業申出があった日の翌日から起算して1月を経過する日前の日であると
きは、育児休業開始予定日とされた日から1月経過日までの間のいずれかの日
を指定することができる(1歳から1歳6か月にあっては2週間)
2.育児休業開始予定日の繰上げ
厚生労働省令で定める事由が生じた場合、1回に限り繰り上げ変更できる
3.育児休業終了予定日の繰下げ
当初の終了予定日の1月前(1歳から1歳6か月にあっては2週間)の日までに、1
回限り繰下げて変更できる
4.育児休業申出の撤回
開始予定日とされた前日までは撤回できる
撤回した場合、特別な事情がない限り、当該子に係る育児休業を申出ることは
できない
■育児休業期間
育児休業開始予定日から育児休業終了予定日まで
2.次のいずれかの事情が生じた場合は、その日に終了する
(1)育児休業終了予定日の前に子の死亡した
(2)育児休業終了予定日の前に子が1歳に達した(1歳6か月に達した)
(3)育児休業終了予定日までに、産前産後休業期間、介護休業期間又は新たな
育児休業期間が始まったこと
■同一の子について配偶者が育児休業をする場合の特例(パパ・ママ育休プラス)
労働者の配偶者が子の1歳到達日以前に育児休業をしている場合、その養育する
1歳2カ月に満たない子について、その事業主に申し出て、育児休業をすること
ができ、事業主は拒否することはできない
ただし、次のいずれかに該当するときは子が1歳2カ月に達するまでの育児休業
をすることができない
(1)育児休業開始予定日が、子の1歳到達日の翌日後である場合
(2)労働者の育児休業開始予定日が、配偶者がしている育児休業の初日前であ
る場合
*育児休業を取得することができる期間は1年間(女性については、出産日及び産
後休業の日数も含む)
*条件を満たせば、1歳6か月まで育児休業を取得することができるが、この場合
の休業開始予定日は、育児休業終了予定日の翌日としなければならない
■不利益な取扱いの禁止
解雇その他の不利益な取扱いをしてはならない
介護休業
■介護休業の対象労働者
原則的な場合
要介護状態にある対象家族を介護する労働者(日々雇用される労働者を除く)
ただし、次の(1)(2)のいずれにも該当する者に限り、当該申出をすることがで
きる
(1)引き続き雇用されている期間が1年以上ある者
(2)介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日を超えて引き続き雇用
されることが見込まれる者(93日経過日から1年を経過する日までに労働契
約の期間が満了し、かつ、契約更新がないことが明らかな者の除く)
*要介護状態とは
2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態
*対象家族とは
①配偶者、父母、子及び配偶者の父母
②同居し、かつ、扶養している祖父母、兄弟姉妹および孫
■労使協定による例外
労働者の過半数で組織する労働組合等との書面による協定で、介護休業できない
として定められた労働者
次に掲げる労働者が該当する
(1)引き続き雇用される期間が1年に満たない労働者
(2)介護休業申出があった日から起算して93日以内に雇用関係が終了すること
が明らかな労働者
(3)1週間の所定労働日が著しく少ない労働者(2日以下)
■介護休業の申出
介護休業開始予定日及び介護休業終了予定日を明らかにして、原則として、介護
休業開始予定日の2週間前の日まで
(1)事業主による介護休業開始予定日の指定
介護休業開始予定日とされた日が、介護休業の申出があった日の翌日から起
算して2週間を経過する日前の日であるときは、介護休業開始予定日とされ
た日から2週間経過日までの間のいずれかの日を介護休業開始予定日として
指定できる
(2)介護休業終了予定日の繰下げ
2週間前の日までに、申し出ることにより、1回限り変更することができる
(3)介護休業申出の撤回
介護休業開始予定日の前日までは、撤回することができる
■介護休業期間
介護休業期間は、介護休業開始予定日とされた日から介護休業終了予定日とされ
た日まで(93日)
次の(1)(2)に掲げるいずれかの事情が生じた場合は、介護休業期間は終了する
(1)終了予定日とされた日の前日までに、対象家族の死亡その他介護しないこ
ととなった事由が生じたこと
(2)産前産後休業期間、育児休業期間又は新たな介護休業期間が始まったこと
■不利益取扱いの禁止
解雇その他不利益な取扱いをしてはならない
子の看護休暇
■子の看護休暇
原則的な場合
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者は、1の年度において5労
働日(2人以上の場合は、10労働日)を限度として子の看護休暇を取得することが
できる
*子の看護休暇の申出は、取得する当日に行うことも、口頭により行うことも可
能である
■労使協定による例外
労働者の過半数で組織する労働組合等との書面による協定で、子の看護休暇を取
得できないとして定められた労働者
次に掲げる労働者が該当する
(1)引き続き雇用されてた期間が6月に満たない労働者
(2)1週間の所定労働日数が著しく少ない労働者(2日以下)
■不利益取扱いの禁止
解雇その他の不利益な取扱いをしてはならない
介護休暇
■介護休暇
原則的な場合
要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う労働者は、1の年度のおい
て5労働日(2人以上の場合は10日労働日)を限度として介護休暇を取得すること
ができる
■労使協定による例外
労働者の過半数で組織する労働組合等との書面による協定で、介護休暇を取得す
ることができないとして定められた労働者
次に掲げる労働者が該当する
(1)引き続き雇用された期間が6月に満たない労働者
(2)1週間の所定労働日数が著しく少ない労働者(2日以下)
■不利益取扱いの禁止
解雇その他不利益な取扱いをしてはならない
所定外労働の制限
常時100人以下の事業所については、平成24年7月1日から適用された
■所定外労働の制限の対象労働者
3歳に満たない子を養育する労働者(日々雇用されるものを除く)であって、過半
数で組織する労働組合等との書面による協定で、次に掲げる所定外労働の制限の
請求ができないものとして定められた労働者に該当しない労働者が請求した場
合、所定労働時間を超えて労働させてはならない
ただし、事業の正常な運営を妨げる場合はこの限りではない
(1)引き続き雇用されている期間が1年に満たない労働者
(2)1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
■所定外労働の制限の請求
請求は、一つの期間、「制限期間」(1月以上1年以内)について、制限開始予定日
及び制限終了予定日とする日を明らかにして、制限開始予定日の1月前までにし
なければならない
■所定外労働の制限の終了
次の(1)から(3)に掲げるいずれかの事情が生じた場合には、その生じた日に
((3)の場合はその前日)に終了する
(1)子の死亡その他養育しないこととなったこと
(2)子が3歳に達したこと
(3)産前産後休業期間、育児休業期間又は介護休業期間が始まったこと
■不利益取扱いの禁止
解雇その他不利益な取扱いをしてはならない
法定時間外労働の制限
■法定時間外労働の制限の対象労働者
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者(日々雇用されるものを除
く)又は要介護状態にある対象家族を介護する労働者であって、次の(1)(2)のい
ずれにも該当しない者が請求したときは、制限時間(1月について24時間、1年
について150時間)を超えて労働時間を延長してはならない
ただし、事業の正常な運営を妨げる場合はこの限りではない
(1)引き続き雇用されている期間が1年に満たない労働者
(2)1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
■法定時間外労働の制限の請求
請求は、一つの期間、「制限期間」(1月以上1年以内)について、制限開始予定日
及び制限終了予定日とする日を明らかにして、制限開始予定日の1月前までにし
なければならない
■法定時間外労働の制限の終了
次の(1)から(3)に掲げるいずれかの事情が生じた場合には、その生じた日に
((3)の場合はその前日)に終了する
(1)子又は対象家族の死亡その他養育又は介護しないこととなったこと
(2)子が小学校就学の始期に達したこと
(3)産前産後休業期間、育児休業期間又は介護休業期間が始まったこと
■不利益取扱いの禁止
解雇その他不利益な取扱いをしてはならない
深夜業の制限の措置
■深夜業の制限の対象労働者
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者(日々雇用されるものを除
く)又は要介護状態にある対象家族を介護する労働者であって、次の(1)から(4)のいずれにも該当しない者が請求した場合においては、午後10時から午前5時までの間(「深夜」)において労働させてはならない
ただし、事業の正常な運営を妨げる場合はこの限りではない
(1)引き続き雇用されている期間が1年に満たない労働者
(2)請求に係る深夜において、常態として子の保育又は対象家族を介護するこ
とができる同居の家族その他厚生労働所令で定める者がいる場合における
労働者
(3)1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
(4)所定労働時間の全部が深夜にある労働者
■深夜業の制限の請求
請求は、一つの期間、「制限期間」(1月以上6月以内)の期間に限る
制限開始予定日及び制限終了予定日とする日を明らかにして、制限開始予定日の
1月前までにしなければならない
■不利益取扱いの禁止
解雇その他不利益な取扱いをしてはならない
所定労働時間の短縮措置等
■3歳未満の子の養育する者に関する措置
1.所定労働時間の短縮措置
3歳に満たない子を養育する労働者で育児休業をしていない者(1日の所定労働
時間6時間以下の労働者を除く)の申出に基づいてなされる措置
2.労使協定による例外
労働者の過半数で組織する労働組合等との書面による労使協定で、所定労働時
間の短縮措置をしないとして定められた労働者
次に掲げる労働者が該当する
(1)引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
(2)1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
(3)業務の性質等上短縮措置を講ずることが困難と認められる業務
*(3)に掲げる労働者であって、3歳に満たない子を養育する者いついては、
労働者の申出に基づいて、始業時刻変更等の措置を講じなければならない
■対象家族を介護する者に関する措置
要介護状態にある対象家族を介護する労働者に関して、申出に基づく連続する
93日の期間以上の期間における所定労働時間の短縮その他の労働者が就業しつ
つ、要介護状態にある対象家族を介護することを容易にするための措置を講じな
ければならない
■不利益取扱いの禁止
解雇その他不利益な取扱いをしてはならない
事業主が講ずるよう努力すべき措置
■養育又は介護をする者に関する措置
平成22年6月30日の時点で常時100人以下の事業については、平成24年7月1日
から適用
1.小学校就学の指揮に達するまでの子を養育する者に関する措置
事業主が講ずるよう努めなければならない必要な措置
労働者の区分 | 必要な処置 | |
(1) |
その1歳*に満たない子を養育する労働者で育児休業していない者 *ケースによって1歳2か月、又は1歳6か月と読み替える(以下(2)おいて同じ) |
始業時刻変更等の措置 |
(2) | その1歳から3歳に達するまでの子を養育する労働者 | 育児休業に関する制度又は始業時刻変更等の措置 |
(3) | その3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者 |
育児休業に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、所定労働時間の短縮措置又は始業時刻変更等の措置
|
2.家族を介護する者に関する措置
事業主は、介護休業若しくは介護休暇に関する制度又は所定労働時間の短縮等
の措置に準じて、必要な措置を講ずるように努めなければならない
労働者の配置に関して、その就業の場所の変更により、子の養育又は家族の介
護を行うことが困難となる労働者がいるときは、その状況に配慮しなければな
らない
■育児休業等に関する定めの周知等の措置
事業主は、あらかじめ次に掲げる事項を定めるとともに、これを労働者に周知さ
せるための措置を講ずるように努めなければならない
(1)休業中における待遇
(2)休業後における賃金、配置その他の労働条件
(3)死亡等で休業期間が終了した労働者の労務の提供の開始時期
(4)休業期間中の社会保険料を事業主に支払う方法
*休業申出後、速やかに書面の交付するように努めなければならない
■雇用管理等に関する措置
事業主は、休業終了後における就業が円滑に行われるようにするため、労働者の
配置その他の雇用管理、職業能力の開発及び向上等に関して、必要な措置を講ず
るよう努めなければならない
■再雇用特別措置等
事業主は、妊娠、出産若しくは育児又は介護を理由として退職した者(育児等退
職者)について、必要に応じて、再雇用特別措置その他これに準ずる措置を実施
するように努めなければならない
■職業家庭両立推進者の選任
事業主は、子の養育、又は家族の介護等を行う労働者の職業生活と家庭生活との
両立を図るようにするために職業家庭両立推進者を選任するように努めなければ
ならない
紛争の解決
■苦情の自主解決
事業主は、苦情の申出を受けたときは、苦情処理機関にその処理を委ねる等その
他の自主的な解決を図るように努めなければならない
■紛争の解決の援助
都道府県労働局長は、紛争当事者の双方又は一方から援助を求められた場合に
は、必要な助言、指導又は勧告をすることができる
■調停の委任
都道府県労働局長は、必要があると認めるときは、紛争調整委員会の調停を行わ
せることができる
この調停は、両立支援調停会議により行われる
雑則
■委託募集の特例
認定中小企業団体の中小企業者は、育児休業又は介護休業をする労働者の代わり
に、必要な労働者の募集を行わせようとする場合において、認定中小企業団体が
募集に従事しようとするときは、有料又は無料で行われる委託募集に係る厚生労
働大臣の許可の規定は適用しない
■報告の徴収並びに助言、指導及び勧告
厚生労働大臣は、事業主に対して報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をす
ることができる
上記の権限は、重要であると認めた事案を除き、都道府県労働局長が行うものと
されている
*報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、20万円以下の過料に処せられる
■公表
厚生労働大臣が勧告した場合において、その勧告を受けた者が従わなかったとき
は、その旨を公表することができる
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