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国民健康保険法

昭和13年に制定、昭和33年に全面改定し、そして昭和36年に義務化された

総則

 

目的(法1条、2条)

 

 1.国民健康保険法は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もって社会保障

    及び国民保健の向上に寄与することを目的とする

 

 2.国民健康保険は、被保険者の疾病、負傷、出産又は死亡に関して必要な保険給

    付を行うものとする

 

保険者(法3条)

 

 1.保険者

 

  国民健康保険の保険者は、市町村及び特別区と国民健康保険組合である

 

   ●国及び都道府県の義務

 

   ①国は、健全な運営に努めなければならない

   ②都道府県は、健全な運営のために必要な指導をしなければならない

 

   ●国民健康保険運営協議会(市町村に設置)

 

   ①運営に関する重要事項を審議する

   ②被保険者を代表する委員、保険医又は保険薬剤師を代表する委員及び公益

    を代表する委員各同数で構成する

 

   ●特別会計

 

   ・市町村は、政令で定めるところにより、特別会計を設けなければならない

 

 2.国民健康保険組合

 

  (1)国民健康保険組合(法13条1項、2項)

 

   ①同種の事業又は業務に従事する者で組合の地区内に住所を有する者を組合

    員とする

   ②組合の地区は、1又は2以上の市町村の区域によるものとする(特別な理

    由があるときを除く)

 

  (2)組合の設立(法17条)

 

   ①都道府県知事の認可

   ②申請は、15人以上の発起人が規約を作成し、組合員となるべき者300人

    以上同意を得て行うものとする

   ③都道府県知事は、市町村の長の意見を聞き運営に支障を及ぼさないと認

    めるときでなければ、認可をしてはならない

   ④組合は、設立の認可を受けたときに成立する

 

   ●組合

 

    ①組合会を置く

    ②組合会議員を選挙する

    ③規約の変更等の重要事項は、組合会の議決経なければならない

 

 3.国民健康保険団体連合会(法83条1項、2項、84条)

 

  (1)保険者は、国民健康保険団体連合会を設立することができる

  (2)連合会は、法人とする

 

   ●設立の認可等

 

   ①都道府県知事の認可

   ②区域内の3分の2以上の保険者が加入したときは、その他の保険者もその

    連合会の会員となる

 

   ●国民健康保険診療報酬審査委員会(法87条1項)

 

   診療報酬請求書の審査を行うため、連合会(区域内の保険者の総数の3分の2

   に達しないものを除く)に、国民健康保険診療報酬審査委員会を置く

 

   ●国民健康保険診療報酬審査委員会の組織

 

    都道府県知事が定めるそれぞれ同数の保険医及び保険薬剤師を代表する委

    員、保険者を代表する委員並びに公益を代表する委員をもって組織する

  

被保険者

 

市町村が行う国民健康保険の被保険者等

 

 ・「一般の被保険者」と「退職被保険者等(退職被保険者とその被扶養者)」に大別

  される

 ・原則として、世帯主もその家族も被保険者となる

  つまり、退職被保険者に係る場合を除き、被扶養者という概念はない

 

 1.一般の被保険者(法5条)

 

  (1)一般の被保険者

 

   市町村又は特別区の区域内に住所を有する者は、当該市町村が行う国民健康

   保険の被保険者とする

 

  (2)適用除外(法6条)

 

    次のからのいずれかに該当する者は、被保険者としない

 

    ①健康保険法の規定による被保険者

    ②船員保険法の規定による被保険者

    ③共済組合の組合員

    ④私立学校教職員共済制度の加入者

    ⑤健康保険法の規定による被扶養者

    ⑥船員保険法の規定による被扶養者

    ⑦健康保険法の規定により日雇特例被保険者手帳の交付を受け、健康保険

     印紙を貼り付ける余白がなくなるに至るまでの間にある者とその被扶養

     者

    ⑧高齢者の医療の確保に関する法律の規定による被保険者

    ⑨生活保護法による保護を受けている世帯に属する者

      ⑩国民健康保険組合の被保険者

      ⑪その他特別の理由がある者で厚生労働省令で定める者

 

  (3)修学中の被保険者の特定(法116条)

 

      修学のため、他の市町村に居住する学生は、親元の市町村の国民健康保険

    の適用を受ける

 

  (4)病院等に入院、入所又は入居中の被保険者の特例(法116条の2,1項)

 

      原則として、病院等に入院等した際、現に住所を有していた従前の市町村の

    国民健康保険の適用を受ける

 

 2.退職被保険者等

 

  (1)退職被保険者

 

   平成26年度までの間において、国民健康保険の被保険者のうち、被用者年

   金各法等に基づく老齢又は退職を支給事由とする年金たる給付を受けること

   ができるもので、次のいずれかに該当する者

 

   ①年金保険の被保険者等であった期間が20年以上である者

   ②40歳に達した月以後年金保険の被保険者等であった期間が10年以上であ

    る者

 

   ●次の者は退職被保険者とされない

 

   ①年金たる給付の支給が年齢を事由として全額支給停止されている者

   ②65歳以上の者

   ③健康保険法の規定による特定健康保険組合の特例退職被保険者

 

  (2)退職被保険者の被扶養者

 

   次のからのいずれかに該当する者は、退職被保険者の被扶養者とする

 

   ①直系尊属、配偶者その他三親等内の親族で同一世帯に属し、生計維持関係

   ②父母及び子で同一世帯に属し、生計維持関係

   ③配偶者死亡後の父母及び子で同一世帯に属し、生計維持関係

 

国民健康保険組合の被保険者

 

 1.組合員及び組合員の世帯に属する者は、被保険者とする

    ただし、適用除外のいずれかに該当する者及び他の組合が行う国民健康保険

    の被保険者は、この限りではない

 

 2.上記の規定に係らず、組合は、規約の定めるところにより、組合員の世帯に

    属するものを包括して被保険者としないことができる

 

  ●同時に2以上の国民健康保険組合の被保険者となることはできない

 

資格の得喪

 

 1.市町村が行う国民健康保険の被保険者の資格の得喪

 

  (1)資格取得の時期

 

   ①市町村の区域内に住所を有するに至った日

   ②適用除外に該当しなくなった日

 

  (2)資格喪失の時期

 

   ①市町村の区域内に住所を有しなくなった日の翌日(ただし、同日に他の市

    町村の区域内に住所を有するに至ったときはその日)

   ②適用除外に該当した日の翌日(ただし、生活保護法による保護を受けてい

    る世帯に属する者又は国民健康保険組合の被保険者に該当するときはその

    日)

 

 2.国民健康保険組合の被保険者の資格の得喪

 

  (1)資格取得に時期

 

   ①組合員若しくは組合員の世帯に属する者となった日

   ②適用除外に該当しなくなった日

   ③他の国民健康保険組合が行う国民健康保険の被保険者でなくなった日

 

  (2)資格喪失の時期

 

   ①組合員又は組合員の世帯に属するものでなくなった日の翌日(ただし、市

    町村または他の国民健康保険組合が行う国民健康保険の被保険者となった

    ときはその日)

   ②適用除外に該当した日の翌日(ただし、生活保護法による生活保護を受け

    ている世帯に属する者又は他の国民健康保険組合の被保険者に該当したと

    きはその日)

 

届出

 

 1.世帯主の届出義務

 

  世帯主は、その世帯に属する被保険者の資格の取得および喪失に関する事項その

  他必要な事項を市町村に届け出なければならない

 

  ●下記の届出は14日以内に市町村に提出しなければならない

 

   ①資格取得の届出

   ②被保険者の氏名変更届

   ③被保険者の世帯変更届

   ④世帯主の住所変更届

   ⑤退職被保険者に関する届出 

 

 2.組合員への準用

 

  世帯主の届出に関する規定は、国民健康保険組合の被保険者について準用される 

 

保険給付

 

給付の種類

 

 1.法定給付

 

  (1)絶対的必要給付

 

   ①療養の給付

   ②入院時食事療養費の支給

   ③入院時生活療養費の支給

   ④保険外併用療養費の支給

   ⑤療養費の支給

   ⑥訪問看護療養費の支給

   ⑦特別療養費の支給

   ⑧移送費の支給

   ⑨高額療養費の支給

   ⑩高額介護合算療養費の支給 

 

  (2)相対的給付

 

   条例又は規約で定めるところにより下記の給付を行うものとする

   ただし、特別な理由があるときは、その全部又は一部を行わないことができる

 

   ①出産育児一時金の支給

   ②葬祭費(葬祭の給付)の支給 

 

  (3)任意給付

 

   条例又は規約で定めるところにより下記の給付を行うことができる

 

   ①傷病手当金の支給

   ②出産手当金の支給 

 

 

健康保険と同種の保険給付

 

 健康保険法と同様の給付が行われるが、 以下の点で特色がある

 

  (1)「家族療養費」等の「家族給付」は存在しない

  (2)自己負担割合の算定において、「一定以上所得者」として取り扱われるの

     は、原則として課税所得が145万円以上の者である

  (3)高額療養費算定基準額の算定において、「上位所得者」として取り扱われる

     のは、基礎控除後の総所得金額の世帯合算額が600万円を超える者である

  (4)保険料を滞納し、被保険者資格証明書の交付を受けている間は、療養の給

     付等は行われず、「特別療養費」の支給対象となる

  (5)保険給付は、「被保険者」に対してではなく、「世帯主又は組合員」に対して

     支給される 

 

   ●受給権の保護

 

    保険給付の権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができ

    ない

 

   ●租税その他の公課の禁止

 

   ●不正利得の徴収

 

    支払った額につき返還させるが、その返還させる額に100分の40を乗じて

    得た額を支払わせることができる

 

   ●厚生労働大臣又は都道府県知事の指導

 

    保健医療機関等は療養の給付に関し、保険医及び保険調剤師は国民健康保

    険の診療又は調剤に関し、厚生労働大臣又は都道府県知事の指導を受けな

    ければならない

 

特別療養費

 

 世帯主又は組合員がその世帯に属する被保険者に係る被保険者資格証明書の交付

 を受けている場合において、療養を受けたときは、特別療養費を支給する 

 

広域化等支援方針

 

広域化等支援方針

   

 1.都道府県は、運営の広域化又は財政の安定化を推進するための広域化等支援 

    方針を定めることができる

 

 2.都道府県は、医療に要する費用について厚生労働省令で定められるところに

    より被保険者の数及び年齢階層別の分布状況その他の事情を勘案してもなお

    著しく多額であると認められるものがある場合には、広域化等支援方針にお

    いて掲げる事項として費用の適正化その他の必要な措置を定めるように努め

    るものとする

 

 3.都道府県は、広域化等支援方針を定め、又は変更しようとするときは、あら

    かじめ、市町村の意見を聴かなければならない

 

 4.都道府県は、広域化等支援方針を定め、又は変更したときは、遅滞なく、公

    表するように努めるものとする

 

 5.市町村は、広域化等支援方針を尊重するように努めるものとする

 

 6.都道府県は、広域化等支援方針の作成及び施策の実施に関して必要があると

    認めるときは、国民健康保険団体連合会その他関係者に対して必要な協力を

    求めることができる

 

広域化等支援基金

 

 都道府県は、広域化等支援方針の作成、その施策の実施その他事業の運営の広域

 化又は財政の安定化に必要な費用を充てるため、広域化等支援基金を設けること

 ができる 

 

費用の負担

 

給付費の負担割合

 

 療養の給付等に要する費用については、退職被保険者等に係る者を除き、公費

 50%保険料50%の割合で賄われる

 

 このうち公費負担の内訳は、国が41%都道府県が9%となっており、それぞれ

 市町村に交付している

 

  ●事務費の負担

 

   国民健康保険の事務費については、国庫負担で行われている 

 

保険料

 

 1.保険料の徴収

 

  保険者は、世帯主又は組合員から保険料を徴収しなければならない

  ただし、地方税の規定により国民健康保険税を課するときは、この限りではな

  い

 

 2.保険料の徴収方法

 

  保険料の徴収には、次の2つの方法がある 

 

   ①特別徴収

 

    年金からの天引きによる徴収方法(障害基礎・厚生年金等や遺族基礎・厚

    生年金等も対象となる)

 

   ②普通徴収

 

    本人から直接徴収する方法 

 

  (1)特別徴収の対象者

 

   原則として、年金保険者から老齢等年金級を受けている被保険者である世帯

   主であって65歳以上75歳未満である者

 

   ただし、次の者は除かれる

 

   ①老齢等年金給付の額が、18万円未満の者

   ②老齢等年金給付を受ける権利を別の法律で定めるところにより担保にして

    いることその他の特別の事情のあることにより、徴収することが著しく困

    難であると認められる者

   ③災害その他の特別の理由で著しく困難であると認められる者

   ④①からのほか、介護保険料が特別徴収されない者

   ⑤国民健康保険料と介護保険料の合計額が、老齢等年金給付額の2分の1に

    相当する額を超える者

   ⑥65歳未満の被保険者が属する世帯に属する者

   ⑦普通徴収の方が徴収を円滑に行うことができると市町村が認める者 

 

  (2)普通徴収の対象者

   

退職被保険者等に係る給付費の費用負担

 

 給付費のうち、退職被保険者等に係る者は、療養給付費等交付金及び退職被

 保険者等が支払う保険料によって賄われている

 

 このうち、療養給付費等交付金については、社会保険診療報酬支払基金が、

 被用者保険の保険者から療養給付等拠出金及び事務費拠出金を徴収し、療養

 給付費等交付金として市町村に交付する仕組みで行われている

   

その他

 

保険料滞納に関する措置

 

 1.被保険者資格証明書の交付

 

  (1)市町村は、保険料を滞納している世帯主が、納期限から1年が経過するま

    での間保険料を納付しない場合においては、災害等その他の政令で定める   

    特別な事情があると認められる場合を除き、世帯主に対して被保険者証

    返還を求めるものとする

 

  (2)1年が経過しない場合においても、被保険者証の返還を求めることができ

    る

 

  (3)被保険者証の返還を求められた世帯主は、被保険者証を返還しなければな

    らない

 

  (4)被保険者証を返還したときは、世帯主に対し、その世帯に属する被保険者

    (18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者を除く)に係る

    保険者資格証明書(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者

    には有効期間6月とする被保険者証)を交付する 

 

 2.被保険者証等の有効期間の定め

 

  市町村は、被保険者証及び被保険者資格証明書の有効期間を定めることができ

  る 

 

 3.支払の一時差止

 

  (1)保険者は、保険給付を受けることができる世帯主又は組合員が保険料を滞

     納しており、かつ、納期限から1年6月が経過するまでの間に納付しない場

     合において、災害等の特別な事情がると認められる場合を除き、保険給付

     の全部又は一部の支払いを一時差し止めることができる

 

  (2)保険者は、1年6月が経過しない場合においても、保険給付の全部又は一部

     の支払いを一時差し止めることができる 

 

 4.保険料額の控除

 

  保険給付の全部又は一部の支払の一時差止がなされている者が、なお滞納して

  いる保険料を納付しない場合においては、一時差止に係る保険給付の額から滞

  納している保険料額を控除することができる 

   

給付期限

 

 1.被保険者が、自己の故意の犯罪行為等により疾病又は負傷したときは、療養

    の給付等は行わない(絶対的給付制限)

 

 2.被保険者が、闘争、泥酔又は著しい不行跡によって疾病又は負傷したとき

    は、療養の給付等はその全部又は一部を行わない

 

  ●少年院収容等の場合の給付制限

 

   その期間に係る療養の給付等は行わない

 

  ●文書提出命令違反等の場合の給付制限

 

   療養の給付等の全部または一部を行わないことができる 

 

不服申立て

 

 1.保険給付に関する処分又は保険料その他徴収金に関する処分に不服がある者

    は、各都道府県に置かれた国民健康保険審査会に審査請求をすることができ

    る

 

    原則として、処分があったことを知った日の翌日から起算して60日内に文書

       または口頭で行わなければならない

 

 2.審査請求は、時効の中断に関して、裁判上の請求とみなす

 

 3.処分取消しの訴えは、審査請求に対する裁決を経た後でなければ提起するこ

    とができない

 

  ●上記以外の処分は、行政不服審査法により行うことになる

   

時効

 

 保険料を徴収し、又はその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利は、2年

 を経過したときは、時効によって消滅する 

   

罰則

 

 1.1年以下の懲役または100万円以下の罰金

 

  正当な理由なしに、職務上知り得た情報を漏らしたとき

 

 2.30万円以下の罰金

 

  正当な理由なしに、出頭拒否、陳述拒否、報告拒否、虚偽陳述、虚偽報告等を

  した者

 

 3.20万円以下の過料

 

  正当な理由なしに、届出違反、虚偽届出、報告拒否、虚偽報告等をした組合又

  は連合会の役員等

 

 4.10万円以下の過料

 

  正当な理由なしに、報告拒否、物件提示拒否、答弁拒否、虚偽答弁をした医師

  等 

  

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