総則
■目的(法1条)
確定給付企業年金法は、少子高齢化の進展、産業構造の変化等の社会経済情勢の変
化にかんがみ、事業主が従業員と給付内容を約し、高齢期において従業員がその内
容に基づいた給付を受けることができるようにするため、確定給付企業年金につい
て必要な事項を定め、国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援
し、もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与するこ
とを目的とする
確定企業給付年金法は、平成13年6月15日に制定され、平成14年4月1日から施行
されている
■確定給付企業年金(法2条1項)
(1)規約型企業年金
厚生労働大臣の規約の承認が必要
(2)基金型企業年金
厚生労働大臣の基金の設立認可が必要
■税制上の措置(法92条)
給付、掛金及び積立金の課税については、必要な措置を講ずる
確定給付企業年金の開始
■確定給付企業年金の実施(法3条)
過半数組織労働組合等の同意
規約について厚生労働大臣の承認
企業年金基金の設立について厚生労働大臣の認可
一つの厚生年金適用事業所について一つ限り(原則)
2以上の厚生年金適用事業所の場合、各事業所の同意が必要
①被用者年金被保険者等とは、次に掲げる者をいう
(1)厚生年金保険の被保険者
(2)私立学校教職員共済制度の加入者
②複数の確定給付企業年金を実施できる場合
■確定給付企業年金に係る規約
1.規約の承認(法4条)
規約の承認を受けようとするときは、政令等で定める事項を定める
2.規約の変更(法6条1項)
過半数労働組合等の同意
厚生労働大臣の承認
■企業年金基金
1.組織(法8条)
基金は、事業主及び使用される加入者の資格を取得した者をもって組織する
常時300人以上の加入者が必要
2.基金の設立の認可(法11条)
規約において必要事項を定め認可を受ける
3.基金の規約の変更(法16条1項、2項)
規約の変更(軽微な変更を除く)については、厚生労働大臣の認可
認可を受けなければ効力を生じない
軽微な変更に関しては、遅滞なく厚生労働大臣に届出
■加入者
1.加入者(法25条)
資格取得・喪失の時期
加入者は、その資格を任意に喪失することはできない
2.加入者期間(法28条)
取得した月から喪失した月の前月まで
前後の加入期間を合算することができる
加入者となる前の期間を加入者期間に算入することができる
*再加入者の加入期間の合算に関する基準
*加入者期間に算入することができる加入者となる前の期間
給付
■通則
1.給付の種類(法29条)
(1)事業主等は、次に掲げる給付を行うものとする(法定給付)
①老齢給付金
②脱退一時金
(2)事業主等は、次に掲げる給付を行うことができる(任意給付)
①障害給付金
②遺族給付金
給付 事由 |
国民年金基金 | 厚生年金基金 | 確定拠出年金 | 確定給付企業年金 |
老齢 | 名称の定めなし | 老齢年金給付 | 老齢給付金 | |
脱退 | 脱退一時金 | |||
障害 | 障害給付金 | |||
死亡 | 名称の定めなし | 遺族給付金 | 死亡一時金 | 遺族給付金 |
2.裁定(法30条)
(1)受給権は、受給権者の請求に基づいて、事業主又は企業年金基金が裁定
(2)事業主は、裁定したときは、遅滞なくその内容を資産管理運用機関に通知
(3)資産管理運用機関又は基金は、裁定に基づき給付の支給を行う
3.年金給付の支給期間等(法33条、令25条、令25条1項1号)
支給期間及び支払期日は、次の基準に従い規約で定めるところによる
ただし、終身又は5年以上にわたり、毎年1回以上定期的に支給する
(1)保証期間を定める場合にあっては、20年を超えない範囲とする
(2)年金給付の支払期日は、毎年一定の期日であること
4.給付制限(法52条、法53条)
(1)故意に、障害又は直接の原因となった事故
支給しない
(2)故意の犯罪行為により死亡させた者
支給しない
■老齢給付金
1.支給要件
(1)60歳以上65歳以下の規約で定める年齢に達したとき
(2)50歳以上(1)の規約で定める年齢未満の規約で定める年齢に達した日以
後に実施事業所に使用されなくなったとき
(3)規約において、20年を超える加入者期間を給付を受けるための要件とし
て定めてはならない
2.支給の繰下げ(法37条1項)
老齢給付金の支給を請求していないものは、繰下げの申出をすることができる
3.老齢給付金の支給停止(法39条)
障害給付金が支給されたときは、老齢給付の全部または一部の支給停止
4.老齢給付金の失権(法40条)
(1)死亡(戸籍法の規定に従い30日以内に届出)
(2)支給期間の終了
(3)老齢給付金の全部を一時金として支給したとき
■脱退一時金(法41条1項、3項)
死亡以外の資格喪失事由に該当し、老齢給付金を受ける要件を満たさない者
受けるための要件として、3年を超える加入者期間を定めてはならない
■障害給付金
1.支給要件
(1)初診日において加入者であった者
(2)障害認定日から60歳以上65歳以下の老齢給付金支給開始要件として定
める年齢に達するまでの間に障害の状態に該当する場合
(3)(2)の期間に初めて基準傷病による障害と他の障害とを併合して障害の状
態に至った者
2.支給停止(法45条)
障害状態に該当しない間は、その支給を停止する
全部又は一部の支給停止
(1)老齢給付金が支給されたとき
(2)脱退一時金が支給されたとき
(3)障害補償、障害補償給付、障害給付等が支給されるとき
3.失権(法46条)
(1)死亡
(2)支給期間の終了
(3)障害給付金の全部を一時金として支給されたとき
■遺族給付金(転給制度あり)
1.支給要件(法47条)
規約において定めているとき
給付対象者が死亡したとき、その遺族に支給する
2.失権(法51条)
(1)受給権者の死亡
(2)支給期間の終了
(3)全部を一時金として支給されたとき
掛金及び積立金
■掛金
1.掛金(法55条1項、2項)
(1)事業主は、給付に要する費用のため、年1回以上掛金を救出しなければな
らない
(2)加入者は、掛金の一部を負担することができる
2.掛金の額(法55条3項)
(1)規約で定めるところにより算定する
(2)財政再計算:少なくとも5年ごとに再計算しなければならない
3.掛金の納付(法56条1項)
(1)規約で定める日までに資産管理運用機関等に納付する
(2)株式による納付はできるが、ただし基金の同意を得たときに限る
■積立金(法59条、法60条1項)
1.毎事業年度の末日に積立金を積み立てなければならない
2.責任準備金の額及び最低積立基準額を下回らない額でなければならない
*積立金の運用は、安全かつ効率的に行わなければならない
確定給付企業年金の実施等
■行為基準
1.事業主の行為基準(法69条)
(1)厚生労働大臣の処分及び規約を順守し、忠実に業務を遂行する義務
(2)第三者の利益を図る目的で、資産管理運用契約の締結等の禁止
2.業務概況の周知(法73条)
(1)業務概況について加入者に周知しなければならない
(2)事業概況について支給に関する義務を負っている者等に周知するように努
める
*毎事業年度終了後4月以内に年金事業及び決算に課関する報告を作成し、
厚生労働大臣に提出しなければならない
■統合・合併・分割等
1.規約型企業年金の統合・分割(法74条1項、2項、法75条1項、4項)
過半数組織労働組合等の同意、そして厚生労働大臣の承認
2.基金の合併・分割(法76条1項、2項、法77条1項、7項)
代議員の4分の3以上の多数による議決を経て申請し、厚生労働大臣の認可
3.実施事業の増減(法78条1項)
事業主全部の同意及び過半数組織労働組合等の同意
■確定給付企業年金の終了(法83条)
1.規約型企業年金
(1)厚生労働大臣の承認
(2)規約の承認の効力が失われたとき
(3)規約の承認が取り消されたとき
2.基金の解散
(1)代議員の定数の4分の3以上の多数による議決又は事業継続の不可能
(2)厚生労働大臣の解散命令
企業年金制度間における移行等
■企業年金制度間の移行等
給付に関する権利義務は、他の確定給付企業年金や他の企業年金制度に移行可能
*確定拠出年金から他の企業年金に移すことはできない
■脱退一時金相当額の移換
本人の申出に基づいて、他の企業年金制度等に移換可能
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