確定拠出年金法は、平成13年6月29日に制定され、平成13年10月1日から施行されている
総則
■目的(法1条)
確定拠出年金法は、少子高齢化の進展、高齢期の生活の多様化等の社会経済情勢の
変化にかんがみ、個人又は事業主が拠出した資金を個人が自己の責任において運用
の指図を行い、高齢期においてその結果に基づいた給付を受けることができるよう
にするため、確定拠出年金について必要な事項を定め、国民の高齢期における所得
の確保に係る自主的な努力を支援し、もって公的年金の給付と相まって国民の生活
の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする
■確定拠出年金等の種類(法2条1項~3項、5項)
1.企業型年金と個人型年金の2種類
(1)企業型年金
厚生年金適用事業所の事業主が、単独でまたは共同して、「企業型年金」の
規定に基づいて実施する年金制度
適用事業所の60歳未満の従業員を加入者として実施する
(2)個人型年金
連合会が、「個人型年金」の規定に基づいて実施する年金制度
連合会とは、国民年金基金連合会であって、個人型年金を実施する者として
厚生労働大臣が全国を通じて1個に限り指定したもの
個人型年金は、60歳未満の自営業者等や企業年金を実施しない企業の従業
員について加入者となる途を開いている
注意:
「公務員(国家公務員共済組合法又は地方公務員等共済組合法の規定による
共済組合の組合員)」や「国民年金法の規定による第3号被保険者」は、確定
拠出年金の加入者とはならない
■確定拠出年金運営管理機関(法2条7項)
「確定拠出年金運営管理機関」とは、次に掲げる業務(以下「運営管理業務」とい
う)の全部又は一部を行う事業をいう
(1)次の①から③までに掲げる業務(以下「記録関連業務」という)
①加入者等の氏名、住所、個人別管理資産額その他の加入者等に関する事項
の記録、保存および通知
②加入者等が行った運用の指図の取りまとめ及びその内容を資産管理機関又
は連合会への通知
③給付を受ける権利の裁定
(2)運用方法の選定及び加入者等に対する提示並びに当該運用の方法に係る情
報提供(以下「運用関連業務」という)
■税制上の措置(法86条)
概ね次のような扱いとされる
・拠出段階では、加入者の拠出は所得控除の対象とし、企業の拠出は損金算
入を認める
・運用段階では、年金資金は特別法人税を課税するが、導入時にはこれを凍結
する
・給付段階では、年金たる老齢給付の場合は公的年金控除を適用し、一時金た
る老齢給付金の場合は退職所得控除を適用する
企業型年金
■企業型年金
1.規約の承認(法3条1項)
使用される被用者年金被保険者等の過半数の同意を得て、規約を作成し、厚生
労働大臣の承認を受けなければならない
2.運営管理業務の委託等
(1)運営管理業務の委託(法7条1項)
事業主は、政令で定めるところにより、運営管理業務の全部又は一部を確定
拠出年金運営管理機関に委託することができる
(2)資産管理契約の締結(法8条1項)
事業主は、政令で定めるところにより、給付に充てるべき積立金について、
資産管理機関と資産管理契約を締結しなければならない
■企業型年金加入者等
1.企業型年金加入者(法9条、法3条3項3号)
適用事業所(以下「実施事業所」という)に使用される被用者年金被保険者等
は、企業型年金加入者とする
実施事業所の企業型年金規約で一定の資格を定めたときは、当該資格を有し
ない者は、企業型年金加入者としない
加入者期間は、資格を取得した月からその資格を喪失した月の前月までとする
2.企業型年金運用指図者(法15条)
次に掲げる者は、企業型年金運用指図者とする
(1)60歳に達したことにより企業型年金加入者の資格を喪失した者
ただし、個人別管理資産がある者に限る
(2)障害給付金の受給権を有する者
3.事業主掛金及び納付(法19条1項、2項、法21条1項)
(1)事業主は、各月につき、掛金を拠出する
(2)掛金の額は、規約で定めるところにより算定した額とする
(3)毎月の掛金を翌月末日までに資産管理機関に納付するものとする
ただし、掛金には、上限(拠出限度額)が設けられており、次の通りである
①厚生年金基金又は確定給付企業年金等に加入していない企業の従業員
月額51,000円
②厚生年金基金又は確定給付企業年金等に加入している企業の従業員
月額25,500円
4.企業型年金加入者掛金及び納付(法19条3項、4項、法21条の2,1項)
企業型年金加入者は、各月につき、規約で定めるところにより、自ら掛金を拠
出することができる
その掛金の額は、規約で定めるところにより、加入者が決定し、又は変更する
ことができる
いわゆる、マッチング拠出と言われるもので、従来個人拠出は認められていな
かったが、平成24年1月1日施行された法律で、拠出限度額の枠内であり、
かつ、事業主の掛金を超えない範囲で個人拠出が認め、所得控除の対象とした
5.企業型年金加入者掛金の源泉控除(法21条の3)
事業主は、前月分の掛金を給与から控除することができる
個人型年金
■個人型年金の開始
1.規約の承認(法55条1項)
(1)国民年金基金連合会は、個人型年金に係る規約を作成し、厚生労働大臣の
承認を受けなければならない
(2)連合会は、少なくとも5年ごとに、加入者数の動向、企業型年金の実施状
況等を勘案し、必要があると認めるときは、個人型年金規約を変更しなけ
ればならない
(3)規約の変更については、厚生労働大臣の承認を受けなければならないが、
所在地の変更等の軽微なものは、遅滞なく厚生労働大臣に届けるだけでよ
いことになっている
2.運営管理業務の委託等
(1)運営管理業務の委託と運営管理機関の指定(法60条1項、法65条、法55条2
項3号)
①連合会は、運営管理業務を確定拠出年金運営管理機関に委託しなければな
らない
②個人型加入者及び個人型年金運用指図者は、自己に係る運営管理業務を行
う確定拠出年金運営管理機関を指定し、又はその指定を変更するものとす
る
(2)事務の委託(法61条)
個人型年金の場合は、企業型年金のように資産管理機関は設置されず、連合
会が資産管理機関を兼ねることになるが、資産管理の業務は事実上、連合会
から金融機関に事務委託される
■個人型年金加入者等
1.個人型年金加入者(法62条1項)
(1)国民年金法に規定する第1号被保険者(第1号加入者)
障害者基礎年金の受給権者等も含む
(2)60歳未満の厚生年金保険の被保険者(第2号加入者)
(3)加入期間は、資格を取得した月から喪失した月の前月までとする
2.個人型年金運用指図者(法64条1項、2項)
(1)個人型年金加入者の資格を喪失した者は、個人型年金運用指図者とする
(2)企業型年金加入者であった者又は個人型年金加入者は、連合会に申し出
て、個人型年金運用指図者となることができる
■掛金
(1)個人型年金加入者は、個人型年金加入期間の各月につき、掛金を拠出する
(2)国民年金法の保険料の納付が行われた月についてのみ行うことができる
ただし、障害基礎年金等の受給権者又は施設入所による法定免除の期間、
又は第2号被保険者及び第3号被保険者に係る特例で保険料の納付を要しな
いとされた期間についても掛金を拠出することができる
(3)拠出限度額
①第1号加入者(自営業者等)
月額68,000円
②第2号加入者(企業の従業員)
月額23,000円
(4)掛金は連合会に納付するが、事業主を介して行うことができる
(5)連合会は、納付された掛金の額を個人型記録関連運営管理機関に通知しな
ければならない
運用
■運用方法の選定及び提示(法23条1項、法73条、則59条)
(1)企業型・個人型運用関連運営管理機関は、運用の方法を少なくとも3以上
選定し加入者に提示しなければならない
(2)運用方法のうちいずれか1以上のものは、元本が確保される運用の方法と
して政令で定めるものでなければならない
■運用の指図(法25条1項、法73条)
(1)企業型・個人型年金加入者は、個人別管理資産について運用の指図を行う
(2)運用の指図は、記録関連運営管理機関等に示すことによって行われる
(3)運用の指図を受けた記録関連運営管理機関等は、その内容を企業型年金に
ついては資産管理機関に、個人型年金については連合会(実際には事務委託
金融機関)に通知する
(4)通知を受けた資産管理機関又は連合会は、速やかに、その通知に従って、
契約の締結、変更または解除その他必要な措置を行わなければならない
(5)記録関連運営管理機関等は、毎年少なくとも1回、年金加入者等の個別管
理資産額その他定める事項を当該年金加入者等に通知しなければならない
給付
■給付の種類(法28条、法73条)
1.企業型年金または個人型年金の給付は、次の通りとする
(1)老齢給付金
(2)障害給付金
(3)死亡一時金
*上記の給付のほか、当分の間、脱退一時金も支給することとされている
2.給付を受ける権利
受給権者の請求に基づいて、記録関連運営管理機関等が裁定する記録関連運営
管理機関等が裁定したときは、遅滞なく、その内容を、企業型年金については
資産管理機関に、個人型年金については連合会に通知しなければならない
3.給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることはでき
ない
ただし、老齢給付金及び死亡一時金を受ける権利を国税滞納処分により差し
押さえる場合は、この限りではない
4.障害給付金として支給を受けた金銭を標準として租税その他の公課を課すこ
とはできない
■老齢給付金
1.支給要件(法33条1項)
企業型年金加入者であった者又は個人型年金加入者であった者であって次に掲
げる通算加入期間を有するときは、それぞれ企業型及び個人型記録関連運営管
理機関等に老齢給付金の支給を請求することができる
対象者 | 通算加入者等期間 |
60歳以上61歳未満 | 10年 |
61歳以上62歳未満 | 8年 |
62歳以上63歳未満 | 6年 |
63歳以上64歳未満 | 4年 |
64歳以上65歳未満 | 2年 |
65歳以上の者 | 1月 |
支給予定期間は、5年以上20年以下でなければならない
2.70歳到達時の支給(法34条、法73条)
年金加入者であった者が、老齢給付金の支給を請求することなく70歳に達し
たときは、資産管理機関(連合会)は、その者に、記録関連運営管理機関等の裁
定に基づいて、老齢給付金を支給する
3.失権
(1)受給権者が死亡したとき
(2)障害給付金の受給権者となったとき
(3)個人別管理資産がなくなったとき
■障害給付金
1.支給要件(法37条1項、令19条)
企業型・個人型年金については、、障害認定日から70歳に達する日の前日ま
での間において、国民年金法に規定する障害等級に該当するに至ったときは、
その期間内に当該記録関連運営管理機関等に障害給付の支給を請求することが
できる
2.失権(法39条)
(1)受給権者が死亡したとき
(2)個人別管理資産がなくなったとき
■死亡一時金
1.支給要件(法49条)
企業型・個人型年金の加入者であった者が、死亡したときに、その者の遺族
に、資産管理機関又は連合会が当該記録関連運営管理機関等の裁定に基づいて
支給する
2.遺族の範囲(法41条1項)
(1)配偶者
(2)死亡当時生計を維持していた子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹
(3)(2)に掲げる者の他、死亡当時主として生計を維持していた親族
(4)子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であって(2)に該当しない者
3.欠格(法42条)
故意の犯罪行為
■脱退一時金
1.少額資産者に係る脱退一時金
(1)支給要件(法附則2条の2,1項、令59条2項)
企業型確定拠出年金から脱退した場合、個人別管理資産の額が15,000円以
下で、資格を喪失した月の翌月から起算して6箇月以内であれば脱退一時金
を当分の間請求することができる
2.短期拠出者等に係る脱退一時金
(1)支給要件(法附則3条1項、令60条2項)
次にいずれかに該当する者は、支給を請求することができる
①60歳未満であること
②企業型年金加入者でないこと
③個人型年金加入者になることができる者に該当しないこと
④障害給付者の受給権者でないこと
⑤通算拠出期間が1月以上3年以下であること又は個人別管理資産の額が
500,000円以下であること
⑥資格を喪失した日から起算して2年を経過していないこと
⑦少額資産者に係る脱退一時金の支給を受けていないこと
*請求先は、個人型年金運用指図者の場合は個人型記録関連運営管理機
関、それ以外の場合は連合会となる
個人別管理資産の移換等
■企業型年金加入者となった場合(法80条1項、2項)
■個人型年金加入者となった場合(法81条1項、2項)
■個人型年金運用指図者となった者の個人別管理資産の移換
■その他の者の場合(法83条1項)
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