総則
■目的(法1条)
法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのっとり雇用の分野における男女の
均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及
び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする
*「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)」を
批准する条件を整備するために、昭和60(1985)年に、「勤労婦人福祉法」の改
正法として成立
均等待遇については、「努力義務」と規定されていたのが、平成9(1997)年の法
改正により「義務」と規定された(平成11年4月施行)
平成18年の改正
平成19年厚労告第394号
■基本理念(法2条)
労働者が性別により差別されることはない
女性労働者にあっては母性を尊重されつつ、充実した職業生活が営むことができ
るようにすることが基本理念(努力義務)
●男女雇用機会均等対策基本方針
厚生労働大臣は、この施策の基本となるべき方針を定める
基本方針を定める時は、労働政策審議会及び都道府県知事に意見を求める
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等
性別を理由とする差別の禁止等に関するものとして、次の規定が設けられている
(1)労働者の性別を理由とする差別の禁止
①募集・採用
②配置・昇進・降格・教育訓練
③一定の福利厚生
④職種・雇用形態変更
⑤退職勧奨・定年・解雇・労働契約更新
(2)性別以外の事由を要件とする措置(間接差別)
(3)ポジティブ・アクション(4割を下回っている)
(4)婚姻、妊娠。出産等を理由とする不利益な扱いの禁止等
■性別を理由とする差別の禁止等
1.募集及び採用における差別の禁止
事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機
会を与えなければならない
(1)募集又は採用に当たって、その対象から男女のいずれかを排除すること
(2)募集又は採用に当たっての条件を男女で異なるものとすること
(3)採用選考において、能力及び資質の有無等を判断する場合に、その方法や
基準について男女で異なる取り扱いをすること
(4)募集又は採用に当たって男女のいずれかを優先すること
(5)求人の内容の説明等募集又は使用に係る情報の提供について、男女で異な
る取扱いをすること
(例)会社の概要等に関する資料を送付する対象を男女いずれかのみとし、
又は資料内容、送付時期等を男女で異なるものとすること
2.募集及び採用における差別禁止の例外
次の場合規定に違反することとはならない
(1)次の職務に従事する労働者に係る場合
①芸術・芸能(モデル、俳優、歌手等)
②守衛、警備員等のうち防犯上の必要(現金輸送車のガードマン等)
③宗教上、風紀上、スポーツ等(神父、巫女、女性更衣室の係員等)
(2)労働基準法(「年少者の深夜業の禁止」、「女性の坑内業務の就業制限」、「女
性の危険有害業務の就業制限」等)による規定、又は保険師助産師看護師法
による規定による場合
(3)風俗、風習等で均等な扱いが困難であると認められるもの
3.配置、昇進、降格及び教育訓練における差別の禁止
事業主は、労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む)、昇進、降格及び
教育訓練について、労働者を性別を理由として、差別的な取扱いをしてはなら
ない
4.配置、昇進、降格及び教育訓練における差別の禁止の例外
前記2.の(1)から(3)に掲げた場合おいては、差別扱いをしているとは解され
ず、性別を理由とする差別の禁止の規定に違反することとはならない
5.福利厚生における差別の禁止
福利厚生の措置について、性別を理由として、差別的扱いをしてはならない
(1)住宅資金の貸付け
(2)教育資金等の資金の貸付け
(3)福祉の増進のために定期的に行われる行われる金銭の給付
(4)資産形成のために行われる金銭の給付
(5)住宅の貸与
(例)
・男性独身寮のみで女性独身寮が入居できる寮等ない企業において、入寮
を希望する女性に対して住宅手当を支給しても住宅貸与の代替措置とし
ては認められない
・自社独身寮の貸与を男性のみに限り、女性独身者にはアパートを借り上
げて貸与することとすることは、差別的取扱いに該当しない
6.職種及び雇用形態の変更における差別の禁止
7.退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新における差別の禁止
■性別以外の事由を要件とする措置(間接差別)
性別以外の事由を要件とするもののうち、男性及び女性の比率その他の事情を勘
案して、実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置については、業
務の性質に照らして、業務の遂行上特に必要である場合、事業の運営の状況に照
らして雇用管理上特に必要である場合その他合理的な理由がある場合でなければ
これを講じてはならない
■女性労働者の係る措置に関する特例(ポジティブ・アクション)
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を
改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるも
のではない
●女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない(4割を下回っている)
■婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等
1.女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する
定め、労働協約、就業規則、労働契約又は念書等、をしてはならない(慣行
となっている場合も含まれる)
2.女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない
3.女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、休業(産前休業)を請求し、又は
休業(産前若しくは産後休業)をしたことその他妊娠又は出産に関する事由
で、女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない
4.妊娠中の女性労働者及び出産1年後を経過しない女性労働者に対してなされ
た解雇は、無効とする
事業主等が講ずべき措置
1.職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置
(セクシュアルハラスメント防止措置)
(1)事業主は、性的な言動により労働条件につき不利益を受け、就業環境が害
されることのないよう、相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の
整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない
(2)厚生労働大臣は、必要な指針を定めるものとする
●セクシュアルハラスメントには次の2種類がある
①対価型セクシュアルハラスメント
②環境型セクシュアルハラスメント
●労働者とは、正規労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員等いわ
ゆる非正規労働者を含む労働者全てをさしている
●セクシュアルハラスメントの防止措置は、女性労働者のみでなく男性労働者
にも適用される
2.妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置
(1)事業主は、女性労働者が母子健康手帳の規定による保険指導又は健康診査
を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければなら
ない
(2)事業主は、女性労働者が保険指導又は健康診査に基づく指導事項を守るこ
とができるようにするために、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置
を講じなければならない
紛争の解決
1.苦情の自主的解決
事業主は、労働者から苦情の申出を受けたときは、苦情処理機関に対して苦情
の処理を委ねる等自主的な解決を図るように努めなければならない
*募集及び採用に係るものは、苦情の自主解決の対象外である
2.紛争解決の援助
(1)都道府県労働局長は、紛争の当事者双方又は一方から援助を求められた場
合には、必要な助言、指導又は勧告をすることができる
(募集及び採用、セクシュアルハラスメントの防止の措置を含む)
(2)事業主は、労働者が援助を求めたこと得お理由として、解雇その他不利益
な取扱いをしてはならない
3.調停の委任
(1)都道府県労働局長は、規定する紛争(募集及び採用についての紛争を除く)
について、関係当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合におい
て紛争解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争の解決
の促進に関する法律の紛争調整委員会に調停を行わせるものとする
(2)事業主は、調停の申請をしたことを理由として、労働者に対して解雇その
他不利益な取扱いをしてはならない
*調停委員
調停は3人の調停員が行う
*「募集・採用」が紛争解決の援助の対象となるのは、都道府県労働局長によ
る助言等の場合のみである
*都道府県労働局長による助言等及び紛争調整委員会による調停は、関係当事
者の一方からの申請によってもおこなわれる
雑則
1.事業主に対する国の援助
国は、事業主に対し、相談その他の援助を行うことができる
2.監督
(1)報告の徴収並びに助言、指導及び勧告
厚生労働大臣は、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧
告することができる(都道府県労働局長に委任)
*罰則ー報告をせず、又は虚偽の報告をした場合
20万円以下の過料
男女雇用機会均等法における罰則はこの場合だけである
(2)公表
厚生労働大臣は、規定に違反している事業主に対し、勧告をした場合におい
て、勧告を受けた者がに従わなかったときは、公表することができる
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