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高齢者医療確保法

老人保健法」(昭和57年制定、昭和58年施行)を改正し、平成18年6月21日制定され、平成20年4月1日から施行

総則

 

目的(法1条、法2条)

 

 医療費適正化の推進

 特定健康診査及び特定保健指導

 前期高齢者に係る保険者間の費用負担の調整

 後期高齢者医療制度

 

 ●国の責務

 

  国は、国民の高齢期における医療に要する費用の適正化等の運営が健全に行わ

  れるように必要な措置を講ずるとともに、第1条に規定する目的の達成に資す

  るため、医療、公衆衛生、社会福祉その他の関連施策を積極的に推進しなけれ

  ばならない

 

 ●地方公共団体の責務

 

  地方公共団体は、法律の趣旨を尊重し、高齢者医療制度等の運営が適切かつ円

  滑に行われるように所要の施策を実施しなければならない

 

定義

 

 1.保険者(法7条2項)

 

  「保険者とは、医療保険各法の規定により医療に関する給付を行う次の医療

  保険の保険者をいう

 

  (1)全国健康保険協会

  (2)健康保険組合

  (3)市町村(特別区を含む)

  (4)国民健康保険組合

  (5)共済組合

  (6)日本私立学校振興・共済事業団

 

 2.加入者(法7条3項)

 

  高齢者医療確保法において加入者とは、次に掲げるものをいう

 

  (1)健康保険法の規定による被保険者(日雇特例被保険者を除く)

  (2)船員保険法の規定による被保険者

  (3)国民健康保険法の規定による被保険者

  (4)国家公務員共済法又は地方公務員等共済組合法の規定による被保険者

  (5)私立学校教職員共済法の規定による私立学校教職員共済制度の加入者

  (6)健康保険法、船員保険法、国家公務員組合法又は地方公務員等共済組合法

     の規定による被扶養者(日雇特例被保険者の被扶養者を除く)

  (7)日雇特例被保険者手帳の交付を受け、その手帳に健康保険印紙を貼り付け

     るべき余白がなくなるに至るまでの間にある者及びその者の被扶養者 

 

前期高齢者に係る保険者間の費用負担の調整(法32条1項、法36条1項、法139条

 1項1号、平成19年厚労令140号1条)

 

 前期高齢者である加入者の数の割合に係る負担の不均衡の調整

 

  *65歳以上75歳未満の加入者及び海外在住の75歳以上の加入者をいう

 

 社会保険診療報酬支払基金は、加入者割合の低い保険者から前期高齢者納付金と

 前期高齢者関係事務費拠出金を徴収し、加入者割合の多い保険者に前期高齢者交

 付金を交付する

 

 ●納付の猶予

 

  1年以内

 

医療費適正化の推進

 

医療費適正化計画

 

 1.医療費適正化計画の策定

 

  (1)全国医療費適正化計画(法8条1項)

 

   厚生労働大臣は、国民の高齢化における適切な医療の確保を図る観点から、

   医療費適正化を総合的かつ計画的に推進するため、医療費適正化基本方針

   定めるとともに、5年ごとに、5年を1期として「全国医療費適正化計画」を定

   めるものとする

 

  (2)都道府県医療費適正化計画(法9条1項)

 

   都道府県は、医療費適正化基本方針に即して、5年ごとに、5年を1期とし

   て、都道府県における都道府県医療費適正化計画を定めるものとする

 

 2.計画の進捗状況に関する評価(法11条)

 

  (1)都道府県は、都道府県医療費適正化計画を作成した年度の翌々年度に、計

     画の進捗状況に関する評価を行い公表する

 

  (2)厚生労働大臣は、全国医療費適正化計画を作成した年度の翌々年度に計画

     の進捗状況に関する評価を行い公表する

 

 3.計画の実績に関する評価(法12条)

 

  (1)都道府県は、都道府県医療費適正化計画の期間の終了日の属する年度の翌

     年度において、計画に掲げる目標の達成及び施策の実施状況に関する調査

     及び分析を行い、計画の実績に関する評価を行うものとする

 

  (2)都道府県は、その内容を厚生労働大臣に報告するとともに、公表する

 

  (3)厚生労働大臣は、全国医療費適正化計画の期間の終了日の属する年度の翌

     年度において、計画に掲げる目標の達成状況及び施策の実施状況に関する

     調査及び分析を行い、計画の実績に関する評価を行うとともに、前項の報

     告を踏まえ、都道府県の意見を聴いて、各都道府県における都道府県医療

     費適正化計画の実績に関する評価を行うものとする

 

  (4)厚生労働大臣は、前項の評価を行ったときは、公表するものとする

 

特定健康診査等

 

 1.特定健康診査等実施計画等(法18条1項、法19条1項、(19)厚労令157号5

    条、同令附則2条)

 

  (1)厚生労働大臣は、特定健康診査(生活習慣病)及び特定保健指導(医師、保健

     師又は栄養管理士が行う保険指導)の適切かつ有効な実施を図るため特定

     健康診査等基本指針を定めるものとする

 

  (2)保険者は、基本指針に即して、5年ごとに、5年を1期として、特定健康診

     査等の実施に関する計画(「特定健康診査等実施計画」)を定めるものとする

 

 2.特定健康診査等の実施(法20条、法24条)

 

  (1)保険者は、特定健康診査等実施計画に基づき、40歳以上の加入者に対して

     特定健康診査を行うものとする(ただし、加入者が特定健康診査に相当す

     る健康診査を受け、その結果を証明する書面の提出を受けたとき、又は保

           険者への記録の送付の規定により特定健康診査に関する送付を受けたとき

     はこの限りではない)

 

  (2)保険者は、特定健康診査等実施計画に基づき、定めるところにより、特定

     保健指導を行うものとする

 

後期高齢者医療制度

 

総則

 

 1.後期高齢者医療(法47条)

 

  高齢者の疾病、負傷または死亡に関して必要な給付を行うものとする

 

 2.後期高齢者医療広域連合(法48条)

 

  市町村は、後期高齢者医療の事務を処理するために、都道府県の区域ごとに当

  該区域内のすべての市町村が加入する後期高齢者医療広域連合を設ける

 

  ●後期高齢者医療広域連合及び市町村は、後期高齢者医療に関する特別会計

   設けなければならない

 

 3.被保険者(法50条)

 

  (1)後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有する75歳以上の者

  (2)後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有する65歳以上75歳未満の者

    で、障害の状態にある旨の認定を受けた者

 

  *適用除外

   ①生活保護法による保護を受けている世帯に属する者

   ②①の他適用除外とすべき特別の理由があるもので厚生労働省令で定める者

    (在留資格を有しない外国人等

 

  ●資格取得の届出 

 

   ・75歳に達したため又は適用除外に該当しなくなったため、被保険者資格

    を取得した者は14日以内に届出書を後期高齢者医療広域連合に提出しな

    ければならない

 

  ●資格喪失の届出 

 

   ・被保険者は、被保険者資格を喪失したときは、14日以内に届書を、後期

    高齢者医療広域連合に提出しなければならない

 

後期高齢者医療給付

 

 1.絶対的医療給付(法56条)

 

  ①健康保険法と同様の給付

    

   被扶養者という概念がないので家族療養費等の給付は存在しない

 

  ②特別療養費(法82条1項)

 

   被保険者資格証明書の交付を受けている者に対して支給する

 

  ③独自給付(法56条3号

 

   条例で定めるところにより独自給付を行う

  

 2.相対的必要給付(法86条1項

 

  死亡に関して条例の定めるところにより葬祭費の支給又は葬祭の給付を行う

  ただし、特別な理由があるときは、その全部又は一部を行わないことができる 

 

 3.任意給付(法86条2項

   

  条例の定めるところにより傷病手当金の支給その他後期高齢者医療給付を行う

  ことができる

 

費用の負担

 

 1.給付費の負担割合(法93条1項、法95条、法96条、法98条、法100条、法

    104条

 

   50%(12分の6)が公費、残り50%が保険料で賄われる

   公費負担の内訳は、国が12分の4、都道府県と市町村がそれぞれ12分の1

 

 2.保険料額(法104条1項、法105条、法107条1項)

 

  (1)市町村は、後期高齢者医療に要する費用に充てるため、保険料を徴収

  (2)市町村は、後期高齢者医療広域連合が行う後期高齢者医療に要する費用に

     充てるため、後期高齢者医療広域連合会に対し、徴収金を納付

  (3)市町村による保険料の徴収については、特別徴収か普通徴収のどちらか

 

  ●保険料率等

 

   概ね2年に通じて財政の均衡を保つことができるものでなければならない

 

  ●普通徴収に係る保険料納付の義務

 

   ①世帯主は、保険料を連帯して納付する義務を負う

   ②配偶者の一方は、保険料を連帯して納付する義務を負う

 

  ●普通徴収に係る保険料の納期

 

   普通徴収による保険料の納期は、市町村の条例で定める

 

 3.後期高齢者交付金(法118条1項、法139条1項)

 

  社会保険診療報酬支払基金が、各医療保険の保険者から「後期高齢者支援金及

  び後期高齢者関係事務費拠出金」を徴収し、「後期高齢者交付金」を、後期高齢

  者医療広域連合に交付するという仕組みで行われている 

 


その他


 

保険料滞納に対する措置

 

 国民健康保険法の場合と同様の仕組みで次の措置が取られる

 

  (1)被保険者証の返還と被保険者資格証明書の交付

  (2)保険給付の全部又は一部の支払の一時差止

  (3)(2)の一時差止に係る保険給付の額からの滞納保険料額の控除

 

 雑則等

   

 1.不服申立て

 

  (1)給付、保険料、徴収金に関する処分について不服がある者は、各都道府県

    におかれた後期高齢者医療審査会に審査請求をすることができる

 

  (2)審査請求は、時効の中断に関しては、裁判上の請求とみなす 

 

 2.時効

 

  (1)保険料その他法律の規定による徴収金の徴収、又は還付及び給付を受ける

     権利の時効は2年を経過したときは、時効によって消滅する

 

  (2)保険料その他法律の規定による徴収金の徴収の告知又は督促は、時効中断

     の効力を生じる 

 

 3.罰則

 

  (1)1年以下の懲役または100万円以下の罰金

 

   秘密保持義務の規定に違反して秘密を漏らした者

 

  (2)30万円以下の罰金

 

   審理のための処分の規定による処分に違反して、出頭せず、陳述せず、報告

   せず、若しくは虚偽の陳述若しくは報告をし、又は診断若しくは検案しなか

   ったとき

 

  (3)10万円以下の過料

 

   診療録の提示等の規定に違反したとき

 

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