■賃金の定義・平均賃金
1.賃金の定義(法11条)
労働基準法で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労
働の対象として使用者が労働者に支払うべきものをいう
1)賃金の意義
労働協約、就業規則、労働契約等によって予め支給条件が明確である場合の
退職手当は法第11条の賃金であり、法第24条第2項の「臨時の賃金等」に該
当する
2)実物給与
実物支給の場合、その一部徴収金額と実際の費用の3分の1との差額部分につ
いては、これを賃金とみなす
3)通勤定期乗車券
法第11条の賃金である
したがって、賃金台帳に記入し、平均賃金算定に含める必要がある
4)スト妥結一時金
臨時の賃金である
5)チップ
旅館の従業員等が客から受け取るものは賃金ではない
しかし、旅館の従業員等が無償等で食事の供与を受け、又は当該旅館等に宿
泊を許されている場合には、かかる実物給与及び利益は賃金とみなすべきで
ある
また、使用者が奉仕料として一定率を定め、一定期間ごとに締め切って全額
を均等配分するような場合のチップ類は、賃金といえる
6)食事の供与
次の①から③の条件を満たす場合、原則として、賃金として取り扱わず福利
厚生費として扱うことができる
①賃金の減額が伴わない
②就業規則、労働協約等で、明確な労働条件となっていない
③客観的な評価額が、社会通念上、わずかなものであると認められる
7)所得税等の事業者負担
①所得税等を事業者が負担する場合は、その代わって負担する部分は賃金と
みなされる
②生命保険契約等を締結して保険料の補助を行う場合、その補助金は、労働
者の福利厚生のために使用者が負担するものであるので、賃金ではない
8)制服等
業務上必要な被服は作業備品として賃金より除外してもよい
参考:賃金の判断区分の参考
賃金になるもの | 賃金にならないもの |
・労働協約、就業規則、労働契約 等によってあらかじめ支給条件が 明確である場合の退職金・結婚祝 金・死亡弔慰金・災害見舞金・私 傷病見舞金等 |
・労働協約、就業規則、労働契約 等によってあらかじめ支給条件が 明確でない場合の退職金・結婚祝 金・死亡弔慰金・災害見舞金・私 傷病見舞金等 |
・住宅の貸与を受けていない者に 対して一定額の均衡給与が支給さ れている場合の均衡給与相当額
|
・住宅の貸与を受けていない者に 対して一定額の均衡給与が支給さ れていない場合の住宅の貸与 ・制服等の支給(原則) ・作業用品の支給(原則) ・食事の供与(原則) |
・法第26条に規定する休業手当
|
・法第76条に規定する休業補償 (法定額を超える部分の休業補償 についても賃金としない) |
・通勤手当(通勤定期乗車券の支 給を含む) |
・出張旅費・宿泊費・無料乗車券
|
・税金の補助金 ・社会保険料の補助金 |
・生命保険料の補助 ・財産形成貯蓄金奨励金 |
・奉仕料分配金(原則) |
・チップ |
・スト妥結一時金
|
・労働者持ちの器具の損料 ・役職員交際費(原則) ・解雇予告手当 |
2.平均賃金(法12条)
(1)平均賃金の算定①(法12条1項~6項)
1)原則としての平均賃金の計算方法
定事由発生日以前の賃金総額 | |
平均賃金= |
|
上記3箇月間の総日数(総歴日数) |
*賃金締切日がある場合は、算定事由の発生した
日の直前の賃金締切日を起算日とした3箇月間
を計算の基礎とする
参考:銭位未満の端数 - 銭未満の端数が生じる時はこれを切り捨てる
2)平均賃金の計算方法 - 日給、時間給、出来高給等の最低保障
①日給、時間給、出来高給等の場合
3箇月間に支払われた賃金総額 | ||
平均賃金= |
|
× 60% |
3箇月間の労働日数 |
②一部が月給、週休等の定額制の場合
3箇月間に支払われた月給等の総額 | 3箇月間に支払われた日給等の総額 | |||
平均賃金= |
|
+ |
|
×60% |
3箇月間の総暦日数 | 3箇月間の労働日数 |
3)算定すべき事由の発生した日
算定すべき事由 | 算定事由発生日 |
解雇予告手当 | 労働者に解雇の通告をした日 |
休業手当 |
休業日(休業が2日以上の期間にわたる場合は、その 最初の日) |
年次有給休暇中の賃金 |
年次有給休暇を与えた日(年次有給休暇が2日以上の期 間にわたる場合は、年次有給休暇の最初の日) |
災害補償 |
死傷の原因たる事故発生の日又は診断によって疾病の 発生が確定した日 |
減給の制裁の制限額 |
減給の制裁の意思表示が相手方に到達した日 |
4)以前3箇月間
事由の発生した日は含まない(前日から遡る3箇月間)
5)控除する期間及び賃金
①業務上の傷病による休業期間
②産前産後の休業期間
③使用者の責めに帰すべき事由による休業期間
④育児休業及び介護休業期間
⑤試みの使用期間
参考:算定期間中に組合専従期間がある場合
参考:算定期間中に争議行為のための休業期間がある場合
6)賃金総額に算入しない賃金
①臨時に支払われた賃金
②3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
③通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないもの
・法令又は労働協約に別段の定めがあるもの
・評価額は、法令に別段の定めがある場合の他は、労働協約に定めなけれ
ばならない
・労働協約に定められた評価額が不適当な場合及び当該評価額が法例若し
くは労働協約に定められていない場合は、都道府県労働局長が定めるこ
とができる
《要点のまとめ》
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■平均賃金の計算方法のまとめ(原則)
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(2)平均賃金の算定②
1)日々雇入れられる者の平均賃金
厚生労働大臣が、事業又は職業別に定めることとされている
2)平均賃金の算定①によって算定し得ない場合の平均賃金
①試み使用期間中
当該期間中の日数及び賃金を使って算定する
②都道府県労働局長が定めるところによる場合
・平均賃金の算定計算において控除すべき期間が算定事由発生日以前3箇
月以上にわたる場合
・雇入れの日に算定事由が発生した場合
・使用者の責めに帰すべからざる休業期間(私傷病等)が算定事由発生日以
前3箇月以上にわたる場合
③都道府県労働局長が算定し得ないと認めた場合
厚生労働省労働基準局長が定めるところとする
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