労働基準法 ー 総則・労働条件の原則

 

労働条件の決定等

 

 1.労働条件の決定(法2条) ー 罰則の定めなし

 

  Ⅰ 労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである

 

  Ⅱ 労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を順守し、誠実に

     各々その義務を履行しなければならない 

 

   1)対等な立場

    現実に労働組合があるかどうか、団体交渉で決定したかどうかを問うもので

    はない

 

   2)労働協約

    労働組合と使用者又はその団体との間で結ばれた労働条件その他に関する協

    定

 

   3)就業規則

    労働者が就業上守るべき規律や賃金、労働時間その他労働条件に関する規

    ここでは、法89条において、常時10人以上の労働者を使用する使用者に作

    成が義務付けられてもの

 

   4)労働契約

    一定の対価(賃金)と一定の労働条件のもとに、自己の労働を提供する契約

 

 2.均等待遇(法3条)

 

   使用者は、労働者の国籍信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間

   その他の労働条件について、差別的な取扱いをしてはならない

 

   1)趣旨

    日本国憲法第14条第1項の理念に沿い、労働条件について平等の原則を規定

 

   2)信条又は社会的身分

    「信条」とは、特定の宗教的若しくは政治的信念のこと

    「社会的身分」とは、生来の身分のこと

 

   3)その他の労働条件

    解雇、災害補償、安全衛生、寄宿舎等に関する条件も含まれる

 

   4)差別的取扱い

    有利又は不利に取り扱うこと

 

   5)性別による差別

    性別を理由とする差別的取扱いは、ここでは含まれていない

 

   6)本条違反

    6箇月以下の懲役または30万円以下の罰金

 

 3.男女同一賃金の原則(法4条)

 

   使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別

   的な取扱いをしてはならない

 

   1)趣旨

    男性労働者と比べて一般的に低位であった女性労働者の社会的、経済的地位

    の向上を賃金に関する差別待遇の廃止という面から取り組んだもの

 

   2)女性であることを理由

    女性労働者に対し賃金で差別することは違法

 

   3)差別的取扱い

    賃金に個人的差異のあることは、本条の規定する差別的取り扱いではない    

 

   4)差別待遇を定める就業規則

    現実に男女差別待遇の事実がない場合には、その規定は無効であるが、法第

    4条違反とはならない

  

 4.公民権行使の保障(法7条)

 

   使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、   

   又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んで

   はならない

 

   但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変

   更することができる

 

   1)公民権行使の範囲

 

公民としての権利に該当するもの(主なもの)
公職の選挙権及び被選挙権
最高裁判所裁判官の国民審査
特別法の住民投票
憲法改正の国民投票
地方自治法による住民の直接請求
選挙人名簿の登録の申出

行政事件訴訟法に規定する民衆訴訟*

公職選挙法に規定する選挙又は当選に関する訴訟
公職選挙法に規定する選挙人名簿に関する訴訟

*国又は地方公共団体の機関の法規に適合しない行為
  の是正を求める訴訟
 
参考訴権の行使は、一般には、公民としての権利の
   行使ではないが、表のからの訴訟について
   は公民権の行使に該当する

 

   2)公の職務

 

公の職務に該当するもの(主なもの)

国又は地方公共団体の公務に民意を反映してその適正を図る職務

 

 衆議院議員その他の議員、労働委員会の委員、陪審員、検察審査員、

 労働審判員、裁判員、法令に基づいて設置される審議会の委員等の職務

 

国又は地方公共団体の公務の公正妥当な執行を図る職務

 

 民事訴訟法の規定による証人、労働委員会の証人等の職務

 

地方公共団体の公務の適正な執行を監視するための職務

 

 公職選挙法に規定する選挙立会人等の職務

 


参考予備自衛官の防衛招集又は訓練招集に応ずる等の職務、又非常勤の
   消防団員の職務は、「公の職務」に該当しない

 

   3)時間外に公民権を行使すべき命令

 

    時間外に行使すべき旨を定め、就業時間中に選挙権を行使する請求すること

    を拒否すれば違法である

 

   4)公民権行使の時間の給与

 

    有給か無給かは、当事者の自由に委ねられている

 

   判例:公職の就任を使用者の承認にかからしめ、その承認を得ずして公職に就

      任したものを懲戒解雇に付する旨の就業規則の条項は無効である

 

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