■雑則、罰則
1.法令等の周知義務(法106条)
Ⅰ 使用者は、労働基準法及び労働基準法に基づく命令の要旨、就業規則、労働
基準法に基づく労使協定並びに第38条の4第1項及び第5項[企画業務型裁
量労働制]に規定する労使委員会の決議を、常時各作業場の見やすい場所へ
掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で
定める方法によって、労働者に周知させなければならない
Ⅱ 使用者は、労働基準法及び労働基準法に基づいて発する命令のうち、寄宿舎
に関する規定及び寄宿舎規則を、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付
ける等の方法によって、寄宿舎に寄宿する労働者に周知しなければならない
1)労働基準法に基づく命令
2)厚生労働省令で定める方法
3)労使委員会の決議の周知
判例①:就業規則の効力
判例②:周知義務
■周知義務のまとめ
要旨のみの周知でよいもの | 全文を周知させる必要のあるもの |
労働基準法 労働基準法施行規則 年少者労働基準規則 女性労働基準規則 等 |
就業規則 労働基準法に基づく労使協定 法第38条の4[企画業務型裁量労働制] の規定に基づく労使委員会の決議 |
2.労働者名簿(法107条)
Ⅰ 使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日々雇い入れられる者
を除く)について調整し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省
令で定める事項を記入しなければならない
Ⅱ Ⅰの規定により記入すべき事項に変更があった場合においては、遅滞なく訂
正しなければならない
1)各事業場ごとに
2)労働者名簿記載事項
①氏名
②生年月日
③履歴
④性別
⑤住所
⑥従事する業務の種類
⑦雇入の年月日
⑧退職の年月日及びその事由
⑨死亡年月日及びその原因
なお、常時30人未満の労働者を使用する事業においては、⑥の記入はしなく
てよい
参考:派遣労働者の労働者名簿と賃金台帳
3.賃金台帳(法108条)
使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調整し、賃金計算の基礎となる事項及び賃
金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金の支払の都度遅滞なく記入しなけ
ればならない
1)各事業場ごとに
2)賃金台帳記載事項
①氏名
②性別
③賃金計算期間
④労働日数
⑤労働時間数
⑥延長時間(残業時間)数、休日労働時間数、深夜労働時間数
⑦基本給、手当その他賃金の種類ごとにその額
⑧法第24条第1項の規定によって賃金の一部を控除した場合には、その額
なお、日々雇い入れられる者(1箇月を超えて引き続き使用される者を除く)
については、③は記入しなくてよい
参考①:法第41条該当者の深夜割増賃金
参考②:組合専従者の賃金台帳
参考③:延長時間(残業時間)数、休日労働時間数、深夜労働時間数
参考④:通貨以外の者で支払われる賃金
参考⑤:賃金の追求の場合の賃金台帳の記入方法
4.記録の保存(法109条)
使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関
係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない
1)その他労働関係に関する重要な書類
出勤簿、タイムカード、36協定書、残業命令書及びその報告書等
2)保存すべき期間の起算日
書類の種類 | 保存すべき期間の起算日 |
労働者名簿 |
労働者の死亡、退職又は解雇の日 |
賃金台帳 |
最後の記入をした日 |
雇入れ又は退職に関する書類 |
労働者の退職又は死亡の日 |
災害補償に関する書類 |
災害補償の終った日 |
賃金その他労働関係に関する重要な書類 |
その完結の日 |
5.無料証明(法111条)
労働者及び労働者になろうとする者は、その戸籍に関して戸籍事務を掌る者又は
その代理者に対して、無料で証明を請求することができる
使用者が、労働者及び労働者になろうとする者の戸籍に関して証明を請求する場
合においても同様である
6.付加金の支払(法114条)
裁判所は、第20条(解雇予告手当)、第26条(休業手当)若しくは第37条(割増賃金)
の規定に違反した使用者又は第39条第7項(年次有給休暇中の賃金)の規定による
賃金を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定によ
り使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額
の付加金の支払いを命ずることができる
ただし、この請求は、違反があった時から2年以内にしなければならない
1)付加金請求の要件
①解雇予告手当
②休業手当
③割増賃金
④年次有給休暇中の賃金
2)労働者の請求
判例:付加金の支払義務
7.時効(法115条)
賃金(退職金を除く)、災害補償その他の請求権(年次有給休暇、帰郷旅費等)は
2年間、退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消
滅する
退職時の証明についての請求権の時効も退職時から2年である
注意:解雇予告手当については、解雇の意思表示に際して支払わなければ解
雇の効力を生じないと解されるので、一般的には解雇予告手当につい
ては時効の問題は生じない
8.罰則
(1)両罰規定(法121条)
Ⅰ 労働基準法の違反行為をした者が、当該事業の労働者に関する事項につい
て、事業主のために行為した代理者、使用人その他の従業者である場合に
おいて、事業主に対しても各本条の罰金刑を科する
ただし、事業主が違反の防止に必要な措置をした場合においては、この限
りではない
Ⅱ 事業主が違反計画を知りその防止に必要な措置を講じなかった場合、違反
行為を知り、その是正に必要な措置を講じなかった場合又は違反を教唆し
た場合においては、事業主も行為者として罰する
参考①事務代理の懈怠と罰則の適用
参考②事業主が法人である場合
(2)罰則のまとめ(法117条~法120条)
①1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金(最高刑)
・強制労働
②1年以下の懲役または50万円以下の罰金
・中間搾取
・児童の使用
・年少者の坑内労働
・女性に禁止されている坑内労働
③6箇月以下の懲役または30万円以下の罰金
・均等待遇
・賃金の男女差別
・公民権の行使
・損害賠償額を予定した契約
・前借金相殺
・強制貯蓄
・解雇制限期間中の解雇
・予告解雇
・ブラックリストの回覧
・法定労働時間の不履行
・法定休憩の無付与
・法定休日の無付与
・有害業の2時間以上の残業
・割増賃金の支給不履行
・法定の年次有給休暇を無付与又はその賃金を不払い
・年少者の深夜業
・年少者の危険有害業務の就業
・妊産婦又は妊産婦以外の女性の危険有害業の就業
・育児時間の無付与
・未成年の認定職業訓練の訓練生の12労働日の年次有給休暇の無付与
・災害補償の不履行
・寄宿舎役員の選出への干渉
・寄宿舎の設備の不備
・労働者の不利益取扱い
④30万円以下の罰金
以下の比較的軽微な労働条件や手続の規定違反、臨検拒否や虚偽報告等
・契約期間
・労働条件の明示
・帰郷旅費の支払
・貯蓄金の返還
・退職時等の証明
・金品の返還
・賃金の支払
・非常時払
・休業手当の支払
・出来高払制の保障給
・1箇月単位、1年単位並びに1週間単位の変形労働時間制又はみなし労働時
間制に係る労使協定の届出
・年少者の証明書
・未成年者の労働契約
・生理休暇
・就業規則の届出
・意見聴取
・制裁規定の制限
・寄宿舎規則や寄宿舎工事の届出
・法例規則の周知
・労働者名簿の調整
・記録の保存
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