■災害補償
1.災害補償
業務上の負傷、又は疾病、あるいは死亡した場合、使用者に一定額の無過失損害
賠償理論に基づく補償を義務付けている。
(1)療養補償(法75条)
Ⅰ 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、
その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければな
らない
Ⅱ Ⅰに規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める
1)業務上の療養の範囲
①診察
②薬剤又は治療材料の支給
③処置、手術その他の治療
④居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
⑤病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
⑥移送
2)診断
労働者が、就業中または事業場若しくわ事業の付属施設内で負傷し、疾病に
かかりまたは死亡した場合には、使用者は、遅滞なく医師に診断させなけれ
ばならない
注意:派遣労働者に対する災害補償の規定は、派遣元の使用者がその義務
を負う
(2)休業補償(法76条1項)
労働者が第75条の規定による療養のため、労務に服することができないために
賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の100分
の60の休業補償を行わなければならない
(3)障害補償(法77条)
労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり、治った場合において、その身体に
障害が存するときは、使用者は、その障害の程度に応じて、平均賃金に別表第
2に定める日数を乗じて得た金額の障害補償を行わなければならない
参考:第1級(1340日)から第14級(50日)まで区分されている
(4)休業補償及び障害補償の例外(法78条、則41条)
労働者が重大な過失によって業務上負傷し、又は疾病にかかり、かつ使用者が
その過失について所轄労働基準監督署長の認定を受けた場合においては、休業
補償又は障害補償を行わなくてもよい
注意: 上記の場合も、療養補償、遺族補償、葬祭料の保障義務は免責されない
(5)遺族補償(法79条)
労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、遺族に対して、平均賃金
の1000日分の遺族補償を行なわなければならない
(6)葬祭料(法80条)
労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、葬祭を行う者に対して、
平均賃金の60日分の葬祭料を支払わなければならない
(7)打切補償(法81条)
第75条の規定のよって補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負
傷又は疾病が治らない場合においては、使用者は、平均賃金の1200日分の打
切り補償を行い、その後は労働基準法の規定による補償は行わなくてもよい
参考:労働者災害補償保険法第19条(傷病補償年金と労働基準法との関係)
(8)分割補償(法82条)
使用者は、支払能力のあることを証明し、補償を受けるべき者の同意を得た場
合においては、障害補償及び遺族補償に替え、平均賃金に別表第3に定める日
数を乗じて得た金額を、6年にわたり毎年補償することができる
2.補償を受ける権利(法83条)
Ⅰ補償を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない
Ⅱ 補償を受ける権利は、これを譲渡し、又は差し押さえてはならない
3.他法との関係(法84条、昭和42.12.1労令30号)
Ⅰ 労働基準法に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法、国
家公務員災害補償法、公立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務
災害補償に関する法律及び地方公務員災害補償法第69条第1項の規定に基づ
く条例に基づいて労働基準法の災害補償に相当する給付が行われるべきもの
である場合においては、使用者は、補償の責を免れる
Ⅱ 使用者は、労働基準法による補償を行った場合においては、同一の事由につ
いては、その価額において民法による損害賠償の責を免れる
4.審査及び仲裁(法85条1項、2項、法86条1項、法99条3項)
Ⅰ 業務上の負傷、疾病又は死亡の認定、療養の方法、補償金額の決定その他補
償の実施に関して意義のある者は、行政官庁(労働基準監督署長)に対して、
審査又は事件の仲裁を申し立てることができる
Ⅱ 行政官庁(労働基準監督署長)は、必要があると認める場合においては、職権
で審査又は事件の仲裁をすることができる
Ⅲ Ⅰ及びⅡの規定による審査及び仲裁の結果に不服がある者は、労働者災害補
償保険審査官の審査又は仲裁を申し立てることができる
5.請負事業に関する例外(法87条、則48条の2)
Ⅰ 建設業が数字の請負によって行われる場合においては、災害補償について
は、その元請負人を使用者とみなす
Ⅱ Ⅰの場合、元請負人が書面による契約で下請負人に補償を引き受けさせた場
合においては、その下請負人もまた使用者とする
ただし、2以上の下請負人に、同一の事業について重複して補償を引き受け
させてはならない
Ⅲ Ⅱの場合、元請負人が補償の請求を受けた場合においては、補償を引き受け
た下請負人に対して、まづ催告すべきことを請求することができる
ただし、その下請負人が破産手続開始の決定を受け、又は行方が知れない場
合においては、この限りではない
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