■保険者
1.保険者の種類
健康保険の保険者は、全国健康保険協会及び健康保険組合とする
*日雇特例被保険者の保険の保険者は、全国健康保険協会のみとする
2.管掌の区分
(1)全国健康保険協会の管掌
健康保険組合の組合員でない被保険者の保険を管掌する
協会が管掌する健康保険を協会管掌健康保険という
(2)健康保険組合の管掌
組合員である被保険者(日雇特例被保険者を除く)の保険を管掌する
(3)2以上の事業所に使用される被保険者の保険者
①保険者の選択
1)それぞれ別個の保険者の管掌となっている場合は、そのうちに一つの
保険者を選択する
2)同時に二つ以上の事業所に使用されるに至った日から10日以内に、選
択届を、協会を選択するときは厚生労働大臣(機構)に、健康保険組合を
選択しようとするときは健康保険組合に提出する
②年金事務所の選択
1)2以上の事業所が協会の管掌になっているが、それぞれの事業所に係る
機構の業務が2以上の年金事務所に分掌されているときは、そのうちの
1つの年金事務所を選択する
2)同時に2以上の事業所に使用されるに至った日から、10日以内に、選択
届を、厚生労働大臣(機構)に提出する
*被保険者は、2以上の事業所に使用されるに至ったときは、10日以内
に、2以上事業所勤務届を厚生労働大臣(機構)又は健康保険組合に提出
しなければならない
ただし、前記①②の選択届を提出するときは、この限りではない
3.全国健康保険協会
(1)業務の分担
厚生労働大臣が行う業務と協会が行う業務
厚生労働大臣 (日本年金機構) の業務 |
①健康保険の適用に関する業務 ②被保険者の資格取得及び喪失の確認 ③標準報酬月額・標準賞与額の決定(任意継続被保険者に 係る者を除く) ④保険料の徴収(任意継続被保険者に係る者を除く) |
|
全国健康保険 協会の業務 |
⑤保険給付に関する業務 ⑥保険事業及び福祉事業に関する業務 ⑦協会が管掌する健康保険の事業に関する業務であって 厚生労働大臣が行う業務以外の者(被保険者証の発行・レ セプト点検等) ⑧任意継続被保険者関係の手続 ⑨船員保険事業に関する業務(船員保険協議会) ⑩前期高齢者納付金等・後期高齢者支援金等・退職者給付 拠出金・介護納付金の納付関連業務 |
(2)協会の組織
①本部と支部
協会は、主たる事務所を東京都に、従たる事務所を(支部)を各都道府県に
置く
②定款
1)協会は、定款をもって必要事項を定めなければならない
・目的
・名称
・事務所の所在地
・役員に関する事項、
・運営委員会に関する事項
・評議会に関する事項
・保健事業に関する事項
・福祉事業に関する事項
・資産の管理その他財務に関する事項
・その他組織及び業務に関する事項として厚労省令で定める事項
2)前項の定款の変更(厚労省令で定める事項に係るものを除く)は厚生労働
大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない
3)協会は、前項の厚労省令で定める事項に係る定款の変更をしたときは、
遅滞なく、厚生労働大臣に届け出なければならない
4)定款の変更をしたときは、遅滞なく、これを公告しなければならない
③役員
1)役員の任命
理事長及び監事は厚生労働大臣が任命するが、理事長を任命するときは
あらかじめ運営委員会の意見を聴かなければならない
理事は理事長が任命するが、任命したときは遅滞なく厚生労働大臣に届
け出るとともに公表しなければならない
2)役員の任期
3年
3)役員の欠格条項
政府又は地方公共団体の職員は役員となることはできない
④運営委員会
事業主及び被保険者の意見を反映させ、協会業務の適正な運営を図るた
め、協会に運営委員会を置く
1)運営委員会の委員
委員は9人以内とされ、事業主、被保険者及び学識経験を有する者のう
ちから厚生労働大臣が各同数を任命する
2)運営委員会の職務
理事長は、必要な事項については、あらかじめ、運営委員会の議を経な
ければならない
3)委員の任期
2年とする
⑤評議会
協会は、都道府県の支部ごとに評議会を設け、支部の業務の実施について
評議会の意見を聴くものとする
評議会の評議員は、事業主及び被保険者並びに学識経験を有する者のうち
から支部長が委嘱する
(3)運営
①事業計画等の認可・財務諸表等
1)毎事事業年度、事業計画及び予算を作成し、事業年度開始前に厚生労
働大臣の許可を受けなければならない
2)毎事業年度の決算を翌事業年度の5月31日までに完結しなければならな
い
3)毎事業年度、財務諸表を作成し、これに事業年度の事業報告書及び決
算報告書を添え、監事及び会計監査人の意見を付けて、決算完結後2月
以内に厚生労働大臣に提出し承認を受けなければならない
*厚生労働大臣は、事業年度ごとの業績について評価を行わなければなら
ず、評価を行ったときは、遅滞なく、協会に対しその結果を通知すると
ともに、公表しなければならない
②準備金
1)保険者は、毎事業年度末において準備金を積み立てなければならない
2)協会は、当該事業年度及びその直前の2事業年度において行った保険給
付に要した費用の額の一事業年度当たりの平均額の12分の1に相当する
額に達するまでは事業年度の剰余金を準備金として積み立てなければな
らない
③借入金
1)協会は、厚生労働大臣の認可を受けて短期借入金をすることができる
2)前項の短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない
ただし、償還できないときは、その償還できない金額に限り厚生労働大
臣の認可を受けて借り換えることができる
*その借り換えて短期借入金は、1年以内に償還しなければならない
④余裕金
余裕金の運用は、事業の目的及び資金の性質に応じ、安全かつ効率的にし
なければならない
⑤重要な財産の処分
協会は、重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは厚生労働
大臣の認可を受けなければならない
(4)秘密保持義務
職務上知り得た秘密を正当な理由なく漏らしてはならない
違反した場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
(5)報告の徴収等
厚生労働大臣は、協会について、必要であると認めるときは、報告を徴し、
又は職員をして立ち入り質問させ、若しくは検査させることができる
(6)監督
厚生労働大臣は、その必要を認めるときは、期間を定めて、協会又は役員に
対しその事業もしくは財産の管理若しくは執行について違反の是正又は改善
を命ずることができる
*厚生労働大臣は、協会又は役員が上記の是正・改善命令に違反したとき
は、協会に対して、期間を定めて、違反に係る役員の全部又は一部の解任
を命ずることができ、協会が違反したときは、解任命令に係る役員を解任
することができる
4.健康保険組合
(1)組合の設立
①任意設立
1)設立要件
被保険者数 | 同意 | 認可等 | |
単一組合 | 常時700人以上 |
各事業所ごとに被 保険者の2分の1以上 |
規約を作成し、厚生労働 大臣の認可を受ける |
総合組合 |
合算して 常時3,000人以上 |
2)設立の認可の申請
②強制設立
厚生労働大臣は、1又は2以上の適用事業所について政令で定める数以上
の被保険者を常時使用する事業主に対して健康保険組合の設立を命ずるこ
とができる
命ぜられた事業主は規約を作り、その設立について厚生労働大臣の認可を
受けなければならない
*正当な理由なく指定された期日までに設立の認可を申請しなかったとき
は、その遅延した期間、負担すべき保険料額の2倍に相当する金額以下
の過料に処せられる
③組合の成立
認可を受けたとき成立する
設立の認可があったときは、速やかに、規約を公告しなければならない
④規約
健康保険組合あは、規約において、厚労省令で定める事項を定めなければ
ならない
規約の変更は、厚生労働大臣の認可を受けなければならない
事務所の所在地、適用事業所の名称及び所在地の変更等は、遅滞なく、厚
生労働大臣に届けることで足りる
(2)組織体制
①組合員
設立事業所の事業主及び使用される被保険者、及び任意継続被保険者を組
合員とする
特定健康保険組合の場合は、特定退職被保険者も組合員とする
*健康保険組合を設立した場合、組合設立に同意しなかった被保険者も組
合員となる
②役員
1)理事の定数等
理事の定数は偶数とし、その半数は事業主が選定した組合会議員におい
て、他の半数は被保険者である組合員の互選した組合会議員において、
それぞれ互選する
理事長は、事業主の選定した組合会議員である理事のうちから理事が選
挙する
2)監事
事業主が選定した組合会議員及び被保険者である組合員が互選した組合
会議員のうちから、それぞれ1人を選挙する
理事又は健康保険組合の職員を兼ねることはできない
3)業務の決定
③組合会
健康保険組合に、組合会を置く
組合会は組合会議員をもって組織する
1)組合会議員の定数等
定数は偶数とし、その半数は事業主おいて事業主(代理人を含む)及び使
用される者うちから選定し、他の半数は被保険者である組合員において
互選する
また、組合会の議決が理事の意向によって影響を受けることがないよう
に、理事定数の2倍を超える数にするものとし、その上で組合員の意思
が適正に反映されるように定める者とされている
2)組合会議員の任期
3年を超えない範囲内
3)組合会の議決事項
規約の変更、収支支出の予算等
4)組合会の権限
*健康保険組合は、別に厚生労働大臣が定めるところにより、毎月事業
状況を翌月20日までに管轄地方厚生局長等に報告しなければならな
い
④組合会の招集
理事長は毎年度1回通常組合会を組合会を招集しなければならないが、必
要があるときはいつでも臨時組合会を招集することができる
なお、組合会議員の定数の3分の1の者が請求したときは、20日以内に
召集しなければならない
組合会が成立しないとき等緊急を世すると認めるときは、理事長は緊急に
行う必要のあるものを処分することができるが、当該処置に関して次に組
合会において報告し、承認を求めなければならない
(3)運営
①会計年度及び予算の届出等
毎年4月1日に始まり、翌年の3月31日に終わる
毎年度収支支出の予算を作成し、当該年度の開始前に厚生労働大臣に届け
出なければならない
重要な資産を処分しようとするときは、厚生労働大臣の認可を受けなけれ
ばならない
収入金を収納するのは翌年度5月31日、支出金を支払うのは翌年度4月30
日限りとする
②準備金
健康保険組合は、当該事業年度及びその直前の2事業年度において行った
保険給付に要した費用の額の一事業年度当たりの平均額の12分の3に相当
する額に達するまでは事業年度の剰余金を準備金として積み立てなければ
ならない
保険給付に要する費用の不足を補う場合を除いては準備金を取り崩しては
ならない
支払上不足が生じたときは、準備金を繰替使用し、又は一時借入金をする
ことができるが、それらは会計年度内に返還しなければならない
③組合債
組合債を起こし、又は記載の方法、利率若しくは償還の方法を変更しよう
とするときは厚生労働大臣の認可を受けなければならない
軽微な変更をしたときは遅滞なく厚生労働大臣に届け出なければならない
軽微な変更には、組合債の金額(減少の場合に限る)と組合債の利息の定率
(低減の場合に限る)がある
④合併及び分割
合併しようとするときは、組合会において組合会議員の定数の4分の3以
上の多数により議決し、厚生労働大臣の認可
分割しようとするときは、組合会において組合会議員の定数の4分の3以
上の多数により議決し、厚生労働大臣の認可
ただし、分割は設立事業所の一部について行うことはできない
設立事業所を増加させ、又は減少させようとするときは、その係る適用事
業所の事業主の全部及び使用される被保険者の2分の1以上の同意を得な
ければならない
⑤解散
組合会議員の定数の4分の3以上の多数による議決
事業継続の不能
厚生労働大臣の解散命令
解散するときは、厚生労働大臣の認可
解散により消滅した健康保険組合の権利義務は、全国健康保険協会が継承
する
解散する場合において、債務を完済することができないときは、健康保険
組合は、設立事業主に対し、完済するための費用の全部または一部を負担
することを求めることができる
(4)監督等
①指定健康保険組合による健全化計画の作成
健康保険事業の収支が均衡しな健康保険組合であって、政令で定める要件
に該当するものとして厚生労働大臣の指定を受けたものを指定健康保険組
合という
指定健康保険組合は、財政健全化計画を定め、厚生労働大臣の承認を受け
なければならない
1)健全化計画
厚生労働大臣の指定の日に属する年度の翌年度を初年度とする3箇年間
とする
2)健全化計画の記載事項
②監督
・解散を命ずることができる
(5)健康保険組合連合会
①健康保険組合は、共同して健康保険組合連合会を設立することができる
②連合会は法人とする
③規約を作り、厚生労働大臣の認可
④認可を受けたときに成立する
⑤厚生労働大臣は、健康保険組合に対し、必要であると認めるときは、連合
会に加入することを命ずることができる
*連合会は、医療に関する給付等の財源の不均衡を調整するために、会員で
ある健康保険組合に対して交付金の交付事業を行っている
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