■傷病に関する現金給付
1.移送費
(1)支給要件
①被保険者が療養の給付(保険外併用療養費を含む)を受けるため、病院等に
移送されたときは、移送費として、厚労省令で定めるところにより算定し
た額を支給する
②保険者が必要であると認める場合に限り支給する
●保険者は次のいずれにも該当すると認める場合に移送費を支給する
1)法に基づく適切な医療を受けたこと
2)移動することが著しく困難であったこと
3)緊急その他やむを得なかったこと
*通院など一時的、緊急的とは認められない場合には移送費は支給されない
*すべての医療を私費による自由診療をして受けた場合は移送費の支給対象
とはならない
(2)支給額
最も経済的な通常の経路及び方法により移送された場合の費用により算定し
た額とする
ただし、現に移送に要した費用の金額を超えることはできない
請求方法は、移送費支給申請書に移送に要した費用の領収書及び医師又は歯
科医師の意見書等を添付して保険者に提出する
●付添人の交通費
医師が必要であったと判断する場合に限り原則として1人まで支給される
●付添人の医学的管理等に係る療養費の支給
現に要した費用の範囲内で移送費とは別に診療報酬に係る基準を勘案して
これを評価し療養費の支給を行うことができる
2.家族移送費
被保険者に対し支給する
3.傷病手当金
(1)支給要件
被保険者(任意継続被保険者及び特例退職被保険者を除く)が次の要件を満た
した場合に支給される
①療養中であること
②労務に服することができないこと
③継続した3日間の待期を満たしたこと
1)療養中であること
証明があれば自費診療で受けた療養、自宅での療養や病後の静養につい
ても支給される
*資格取得前の傷病についても支給される
*業務上の傷病や美容のための整形手術等は対象外
*医師等の療養を受けない場合でも、医師の意見書、事業主の証明書等
を資料として成否を判定し、支給される場合がある
*保険医の診療を受けない場合でも、療養は必ずしも保険医について診
療を受けた場合のみとは限られていないので、支給される
2)労務に服することができないこと
労務不能の判定は、諸条件を考慮して保険者が判断することとされてい
る
・労務不能と判断される事例
休業中に家事の副業に従事しても勤務する事業所における労務不能の
程度にある場合
・労務不能と判断されない場合
労衛法によって伝染の恐れがある保菌者に対し事業主が休業を命じた
場合で、その症状から労務不能と認められない場合
3)継続した3日間の待期を満たしたこと
3日間連続して労務不能でなければ完成しない
報酬を受けていても、有給休暇として処理されていても待期は完成する
*一旦労務に服した後のその疾病等で労務不能になった場合は待期の適用
はない
*事務所の公休日又は被保険者の死亡日についても支給される
*事業主が保険料未納がある場合でも要件を満たしていれば支給されうる
*介護休業期間中の者についても支給される
(2)支給額
受給する直前の標準報酬月額により算定した標準報酬日額の3分の2相当額
とする
(3)供給調整
①出産手当金との調整
出産手当金と傷病手当金の支給要件を同時に満たす期間中は、出産手当金
の方が優先支給され、傷病手当金は支給されない
出産手当金を支給すべき場合において傷病手当金が支払われたときは、そ
の支払われた傷病手当金は出産手当金の内払とみなす
②報酬との調整
傷病手当金又は出産手当金は、報酬の全部または一部を受けることができ
る者に対しては、これを受けることができる期間は支給しない
ただし、報酬の額が傷病手当金又は出産手当金の額より少ないときは、そ
の差額を支給する
*同一期間内に事業主から介護休業手当等で報酬と認められる者が支給さ
れているときは、傷病手当金又は出産手当金の支給額が調整される
③障害厚生年金との調整
1)同一の傷病について障害厚生年金等の支給を受けることができるときは
傷病手当金は支給されないとされているが、障害厚生年金等の額を360
で除した額よりも傷病手当金の方が多いばあはその差額が支給される
2)報酬との調整規定により、減額された傷病手当金の支給を受けている者
が、同一の傷病に関し(減額しない本来の傷病手当金より低額の)障害厚
生年金等の支給を受けることができるときは、次のような差額支給が行
われる
・報酬額(日額)<障害厚生年金等の日額のとき
(報酬額+差額支給される傷病手当金の額)-障害厚生年金等の日額
・報酬額(日額)>障害厚生年金等の日額のとき
差額支給される傷病手当金の額
④障害手当金との調整
同一の傷病に関して障害手当金が支給されるときは、その者が仮に受ける
とした場合の傷病手当金の額の合計額が障害手当金の額に達するまで傷病
手当金の支給が停止される
⑤老齢退職年金給付との調整
傷病手当金の継続給付を受けている者(日雇特例被保険者又は日雇特例被
保険者であった者を除く)に老齢退職年金給付が支給されるようになった
ときは、傷病手当を打切り又は老齢退職年金給付の日額相当額との差額支
給となる
*上記の調整は、傷病手当金の継続給付を受けている者(退職者)について
のみ行われる
⑥休業補償給付との調整
労災法による休業補償給付を受給している被保険者が、業務外の事由によ
る傷病によって労務不能になった場合には、休業給付の額が傷病手当金の
額に達しないときにおけるその差額部分に係るものを除き、支給されない
(4)支給期間
現実に支給を始めた日から起算して1年6月を超えないものとする
●再発の場合
別個の疾病とみなし、改めて起算する
●併発傷病についての支給
併発した傷病において労務不能が考えらるか否かによって支給又は不支給
の措置をとる
●労務不能期間中に他の疾病が発生した場合
後の疾病について支給される
(5)受給手続
傷病手当金支給申請書に、医師等の意見書及び事業主の証明書を添付して保
険者に提出しなければならない
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