労働者災害補償保険法-給付通則

 

給付通則

 

 1.年金給付の支給期間(法9条)

 

  Ⅰ 年金たる保険給付の支給は、支給すべき事由が生じた月の翌月から始め、

    支給を受ける権利が消滅した月で終わるものとする

 

  Ⅱ 年金たる保険給付は、その支給を停止すべき事由が生じた時は、その字通

    が生じた月の翌月からその事由が消滅した月までの間は、支給しない

 

  Ⅲ 年金たる保険給付は、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の6期に、

    それぞれの前月分までを支払う

 

    ただし、支給を受ける権利が消滅した場合におけるその期の年金たる給付

    は、支給期間でない月であっても、支払うものとする

 

 2.死亡の推定(法10条、法附則58条4項、法附則61条2項)

 

  Ⅰ 船が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となった際現にその船に

    乗っていた労働者若しくは船舶に乗っていてその船舶の航行中に行方不明と

    なった労働者の生死が3箇月間分からない場合又はこれらの労働者の死亡が

    3箇月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期が分からない場合には、

    遺族補償年金、葬祭料、遺族給付及び葬祭給付の支給に関する規定について

    は、その船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明になった日又は

    労働者が行方不明になった日に、当該労働者は、死亡したものと推定する

 

    航空機が墜落し、滅失し、若しくは行方不明になった場合にも、同様とする

 

  Ⅱ 障害補償年金差額一時金は、遺族補償給付とみなして、Ⅰの規定を適用する

 

  Ⅲ 障害年金差額一時金は、遺族給付とみなして、Ⅰの規定を適用する 

 

 3.未支給の保険給付

 

  (1) 請求権者(法11条1項、2項)

 

   1) 請求権者の要件

 

     未支給の保険給付の請求権者は次のとおりである

 

    原則:死亡した受給権者の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で

       あって、受給権者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者

 

    遺族(補償)年金:死亡した労働者の遺族たる配偶者、子、父母、孫、祖父母

       及び兄弟姉妹であって次順位の受給権者となる者

       

       [死亡した遺族(補償)年金の受給権者と同順位の受給権者がある時はそ

       の者が、同順位の受給権者が無くて後順位の受給権者がある時は次順

       位の受給権者が請求権者となる]

 

   2) 未支給の保険給付の請求権者がない場合等

 

    未支給の保険給付を請求できる者がいない時:死亡した保険給付の受給権者

    の相続人

 

    未支給の保険給付の請求権者がその支給を受けないうちに死亡した時:未支

    給の請求権者の相続人

 

  (2) 順位(法11条1項、3項、4項)

 

   Ⅰ 未支給の保険給付を受けるべき者の順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父

     母、兄弟姉妹の順序による

 

     *遺族(補償)年金については、遺族(補償)年金を受けるべき遺族の順位に

      よる

 

   Ⅱ 未支給の保険給付を受けるべき同順位者が2人以上ある時は、その1人がし

     た請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その1人に対し

     てした支給は、全員に対してしたものとみなす

   

   ・順位

    未支給の遺族(補償)年金を受けることができる遺族は、死亡した遺族(補償)

    年金の受給権者以外の当該遺族(補償)年金の受給権者のうち、最先順位の者

    である

 

 4.受給権の保護

 

  (1) 退職後の権利(法12条の5,1項)

 

   保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない

 

  (2) 譲渡等の禁止(法12条の5,2項)

 

   保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることがで

   きない

 

   ただし、年金たる保険給付を受ける権利を独立行政法人福祉医療機構法の定め

   るところにより独立行政法人福祉医療機構に担保に供する場合は、この限りで

   はない(小口貸付の担保)

 

   【参考】受任者払い

 

     原則禁止されている

     

     ただし、メリット制適用事業場の業務上被災労働者が、労災保険給付を受

     けるべき補償費につき当該事業主より補償費の立替払いを受けた時は、当

     該労働者がその補償費の受領方を事業主に委任した場合に限り、その委任

     を受けた事業主にその補償費を支払って差し支えない

 

  (3) 公課の禁止(法12条の6)

 

    租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として課するこ

   とはできない

 

   【法44条】労働者災害補償保険に関する書類には、印紙税を課さない

 

 5.端数処理

 

  保険給付の支払額に1円未満の端数が生じた時は、これを切り捨てる

 

  *特別支給金の支払金額の端数処理も同様である

 

 6.保険給付に関する届出(法12条の7、則21条1項)

 

  Ⅰ 保険給付を受ける権利を有する者は、厚生労働省令で定めるところにより、

    政府に対して、保険給付に関し必要な厚生労働省令で定める事項を届け出、

    又は保険給付に関し必要な厚生労働省令で定める書類その他の物件を提出し

    なければならない

 

  Ⅱ 年金たる保険給付の受給権者は、毎年、厚生労働大臣が指定する日までに、

    所定の事項を記載した報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければなら

    ない

 

    ただし、所轄労働基準監督署長があらかじめその必要がないと認めて通知し

    た時は、この限りではない

 

年金たる保険給付の受給権者の生年月日 提出期限
 1月から6月  6月30日
7月から12月 10月31日

 

    *定期報告書等の提出を怠ると、保険給付の支払の一時差止めの対象となる

 

    【参考】

     年金たる保険給付の受給権者の届出

 

     年金たる保険給付の受給権者は、次に掲げる場合には、遅滞なく、文書

     で、その旨を所轄労働基準監督署長に届け出なければならない

 

     1) 氏名及び住所の変更

 

     2) 同一の事由により障害又は遺族厚生年金等が支給される場合

 

     3) 同一の事由による障害又は遺族厚生年金等の支給額が変更の場合

 

     4) 同一の事由による障害又は遺族厚生年金等の支給がなくなったの場合

 

     5) 同一の事由により障害(補償)厚生年金の受給権者にあっては、その障

       害の程度に変更があった場合

 

     6) 遺族(補償)年金の受給権者にあっては、次に掲げる場合

 

      ① 法第16条の4第1項の規定により遺族(補償)年金を受ける権利が消滅

        した場合

 

      ② 遺族(補償)年金の受給権者と生計を同じくしている遺族(補償)年金

        を受けることができる遺族の数に増減を生じた場合

 

      ③ 法第16条の3第4項の規定に該当するに至った場合

 

     7) 傷病(補償)年金の受給権者にあっては、次に掲げる場合

 

      ① 負傷又は疾病が治った場合

 

      ② 負傷又は疾病による障害の程度に変更があった場合

 

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