労働保険制度(制度紹介・手続き案内)
~労働者を一人でも雇用していれば労働保険に加入する必要があります~
■制度概要
1.労働保険とはこのような制度です。
○ 労働保険とは労働者災害補償保険(一般に「労災保険」といいます。) と雇用保険とを総称した言葉です。
○ 保険給付は両保険制度で別個に行われていますが、保険料の納付等については一体のものとして取り扱われています。
○ 労働者(パートタイマー、アルバイト含む)を一人でも雇用していれば、業種・規模の如何を問わず労働保険の適用事業となり、事業主は成立(加入)手続を行い、労働保険料を納付しなければなりません(農林水産の一部の事業は除きます。)。
○ この労働保険制度は、昭和50年に全面適用となってから既に30年余りを経過し、その間に適用事業数は着実に増加し、平成20年度末現在で約296万事業に達していますが、現在においてもなお相当数の未手続事業が存在しているとみられ、このことは、労働保険制度の健全な運営、費用の公平負担、労働者の福祉の向上等の観点から極めて重要な課題となっており、早急な未手続事業の解消が求められています。
○ このため、厚生労働省では、平成17度から「未手続事業一掃対策」に取り組み、各種事業主団体、個別事業主への訪問指導の強化や、自主的に保険関係の成立(加入)手続を取らない事業主に対しては、積極的な職権での成立手続の実施等を行っております。
※ 自主的に成立手続が行われない場合は、遡って労働保険料を徴収するほか、併せて追徴金を徴収することになります。
※ 労災保険未手続事業場に対する罰則が強化されました。
2.労災保険・雇用保険の特徴
□労災保険とは
労働者が業務上の事由又は通勤によって負傷したり、病気に見舞われたり、あるいは不幸にも死亡された場合に被災労働者や遺族を保護するため必要な保険給付を行うものです。
また、労働者の社会復帰等を図るための事業も行っています。
・労災保険制度
・労災保険率表(平成23年度(PDF:133KB),平成24年度~26年度(PDF:134KB) ,平成
27年度~(PDF:161KB))
・労災保険率の設定について(PDF:74KB)
・労務費率表(平成24年度~平成26年度(PDF:75KB) ,平成27年度~ (PDF:68KB))
・「請負による建設の事業」における労務費率を用いた労災保険料の算定について
(PDF:180KB)
・労災保険のメリット制について(PDF:697KB)
・メリット制の改正点(平成24年度~)(PDF:2,004KB)
・船舶所有者の事業のメリット制について(PDF:582KB)
・労災保険率適用事業細目表(PDF:166KB)
・船舶所有者の事業の種類の細目表(PDF:60KB)
・有期事業の一括ができる都道府県労働局の管轄区域
□雇用保険とは
労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、再就職を促進するため必要な給付を行うものです。
また、失業の予防、雇用構造の改善等を図るための事業も行っています。
・雇用保険制度
・雇用保険率表
事業の種類
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保険率
|
事業主負担率
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被保険者負担率
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一般の事業
|
11/1000
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7/1000
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4/1000
|
農林水産
清酒製造の事業
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13/1000
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8/1000
|
5/1000
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建設の事業
|
14/1000
|
9/1000
|
5/1000
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4.お支払いいただいた労働保険料(労災保険料、雇用保険料)の使用用途について
・労災保険料(表面) [141KB]
・雇用保険料(裏面) [110KB]
・ 全体版 [194KB]
■労働保険の手続き方法
1.労働保険の成立手続(加入方法)
■成立手続等の方法
保険関係成立届、概算保険料申告書
労働保険の適用事業となったときは、まず労働保険の保険関係成立届を所轄の労働基準監督署又は公共職業安定所に提出します。そして、その年度分の労働保険料(保険関係が成立した日からその年度の末日までに労働者に支払う賃金の総額の見込額に保険料率を乗じて得た額となります。)を概算保険料として申告・納付していただくこととなります。
雇用保険適用事業所設置届、雇用保険被保険者資格取得届
雇用保険の適用事業となった場合は、上記のほかに、雇用保険適用事業所設置届及び雇用保険被保険者資格取得届を所轄の公共職業安定所に提出しなければなりません。
I 一元適用事業の場合
※一元適用事業とは、労災保険と雇用保険の保険料の申告・納付等を両保険一本として行う事業です。
(1)
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保険関係成立届
(保険関係が成立した日から10日以内)
|
どこへ
所轄の労働基準監督署
|
(2)
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概算保険料申告書
(保険関係が成立した日から50日以内)
|
いずれかに
所轄の労働基準監督署
所轄の都道府県労働局
日本銀行(代理店、歳入代理店(全国の銀行・信用金庫の本店又は支店、郵便局)でも可)
|
(3)
|
雇用保険適用事業所設置届
(設置の日から10日以内)
|
どこへ
所轄の公共職業安定所
|
(4)
|
雇用保険被保険者資格取得届
(資格取得の事実があった日の翌月10日まで)
|
どこへ
所轄の公共職業安定所
|
注1.(1)の手続を行った後又は同時に、(2)の手続を行います。
2.(1)の手続を行った後に、(3)及び(4)の手続を行います。
II 二元適用事業の場合
※二元適用事業とは、その事業の実態からして、労災保険と雇用保険の適用の仕方を区別する必要があるため、保険料の申告・納付等をそれぞれ別個に二元的に行う事業です。
一般に、農林漁業・建設業等が二元適用事業で、それ以外の事業が一元適用事業となります。
1. 労災保険に係る手続
(1)
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保険関係成立届
(保険関係が成立した日から10日以内)
|
どこへ
所轄の労働基準監督署
|
(2)
|
概算保険料申告書
(保険関係が成立した日から50日以内)
|
いずれかに
所轄の労働基準監督署
所轄の都道府県労働局
日本銀行(代理店、歳入代理店(全国の銀行・信用金庫の本店又は支店、郵便局)でも可)
|
注.(1)の手続を行った後又は同時に、(2)の手続を行います。
2. 雇用保険に係る手続
(1)
|
保険関係成立届
(保険関係が成立した日から10日以内)
|
どこへ
所轄の公共職業安定所
|
(2)
|
概算保険料申告書
(保険関係が成立した日から50日以内)
|
いずれかに
所轄の都道府県労働局
日本銀行(代理店、歳入代理店(全国の銀行・信用金庫の本店又は支店、郵便局)でも可)
|
(3)
|
雇用保険適用事業所設置届
(設置の日から10日以内)
|
どこへ
所轄の公共職業安定所
|
(4)
|
雇用保険被保険者資格取得届
(資格取得の事実があった日の翌月10日まで)
|
どこへ
所轄の公共職業安定所
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注.(1)の手続を行った後又は同時に、(2)~(4)の手続を行います。
□成立手続を怠っていた場合には
成立手続を行うよう指導を受けたにもかかわらず、自主的に成立手続を行わない事業主に対しては、行政庁の職権による成立手続及び労働保険料の認定決定を行うこととなります。その際は、遡って労働保険料を徴収するほか、併せて追徴金を徴収することとなります。
また、事業主が故意又は重大な過失により労災保険に係る保険関係成立届を提出していない期間中に労働災害が生じ、労災保険給付を行った場合は、事業主から遡って労働保険料を徴収(併せて追徴金を徴収)するほかに、労災保険給付に要した費用の全部又は一部を徴収することになります。
2.労働保険料の申告・納付
■労働保険の年度更新
労働保険の保険料は、年度当初に概算で申告・納付し翌年度の当初に確定申告の上精算することになっており、事業主の皆様には、前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を併せて申告・納付していただくこととしています。
これを、「年度更新」といい、原則として例年6月1日から7月10日までの間(※)にこの手続を行っていただきます。
また、石綿健康被害救済法に基づく一般拠出金も、年度更新の際に労働保険料と併せて申告・納付することとなっております。
※ 平成21年度の年度更新手続から、申告・納付時が6月1日から7月10日までの間に変更になりました。
※ 7月10日が土曜日に当たるときは7月12日、日曜日に当たるときは7月11日までとなります。
■労働保険料の延納(分割納付)
概算保険料額が40万円(労災保険か雇用保険のどちらか一方の保険関係のみ成立している場合は20万円)以上の場合又は労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合は、原則として下記のとおり、労働保険料の納付を3回に分割する事ができます。
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前年度以前に成立した
事業場
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4/1~5/31に成立した
事業場
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6/1~9/30に成立した
事業場
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第1期
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第2期
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第3期
|
第1期
|
第2期
|
第3期
|
第1期
|
第2期
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期間
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4.1~7.31
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8.1~11.30
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12.1~3.31
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成立した日~7.31
|
8.1~11.30
|
12.1~3.31
|
成立した日~11.30
|
12.1~3.31
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納期限
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7月10日
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10月31日
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1月31日
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成立した日の
翌日から50日
(注)
|
10月31日
|
1月31日
|
成立した日の
翌日から50日
(注)
|
1月31日
|
※納期限が土曜日に当たるときはその翌々日、日曜日に当たるときはその翌日が納期限とな
ります。
(注)国税通則法第10条第1項の規定により、年度途中に新規成立した事業場については、期
間の算定に初日を算入しません。
※労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合
労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合には、納期限が10月31日のものに
ついては原則として11月14日、納期限が1月31日のものについては原則として2月14日
となります。
10月1日以降に成立した事業については、延納が認められませんので、成立した日から3
月31日までの期間の保険料を一括して納付していただくことになります。
有期事業については、事業の全期間が6ヵ月を超え、かつ概算保険料の額が75万円以上の
ものはおおむね上記に準じた方法で分割納付が認められます。
■増加概算保険料の申告・納付
現行、年度の中途において、事業規模の拡大等により賃金総額の見込額が当初の申告より100分の200(2倍)を超えて増加し、かつ、その賃金総額によった場合の概算保険料の額が申告済の概算保険料よりも13万円以上増加する場合は、増加額を増加概算保険料として申告・納付することとなっています。
■労働保険料の負担割合
労働保険料は、労働者に支払う賃金総額に保険料率(労災保険率+雇用保険率)を乗じて得た額です。そのうち、労災保険分は、全額事業主負担、雇用保険分は、事業主と労働者双方で負担することになっています。
◎労災保険・・・全額事業主負担 ⇒ 労災保険率表(平成23年度(PDF:133KB),平成24年度~26年度(PDF:134KB)),平成27年度~(PDF:161KB))
◎雇用保険・・・事業主と労働者双方で負担
◎雇用保険率表
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(平成28年4月1日改正)
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事業の種類
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保険率
|
事業主負担率
|
被保険者負担率
|
一般の事業
|
11/1000
|
7/1000
|
4/1000
|
農林水産
清酒製造の事業
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13/1000
|
8/1000
|
5/1000
|
建設の事業
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14/1000
|
9/1000
|
5/1000
|
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■保険料の計算例
1年間に労働者に支払う賃金が310万円(従業員1名、毎月20万円×12ヶ月+賞与70万円)の小売業を営んでいる場合。
労災保険率 3.5/1000(小売業)
雇用保険率 11/1000(うち被保険者負担分は4/1,000)
労働保険料 = 賃金総額 ×(労災保険率+雇用保険率)
3,100千円(賃金総額)×(3.5+11)/1000(労災保険率+雇用保険率)=44,950円(労働保険料)
※この場合の事業主負担分は、雇用保険の被保険者負担分を除いた額となります。
この場合の被保険者負担分は
賃金種別
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賃金額
|
被保険者負担分
(4/1,000)
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回数
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被保険者負担額
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月分賃金
|
200,000円
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月額800円
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12回
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9,600円
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賞与(夏期)
|
300,000円
|
1,200円
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1回
|
1,200円
|
賞与(冬期)
|
400,000円
|
1,600円
|
1回
|
1,600円
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被保険者負担分計
|
12,400円
|
したがって、事業主負担分の労働保険料は、44,950円-12,400円=32,550円となります。
◎
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雇用保険の被保険者負担額と端数処理について
雇用保険の被保険者負担額は、労働者(被保険者)に支払われた賃金額に被保険者負担率をかけて算定します。(なお、以前用いられていた一般保険料額表については、平成17年3月31日限りで廃止となりました。)
この被保険者負担額については、事業主は、労働者に賃金を支払う都度、その賃金額に応ずる被保険者負担額を、賃金から控除することができます。
この額に1円未満の端数が生じた場合、「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」第3条に基づき、債務の弁済額に50銭未満の端数があるときには切り捨て、50銭以上1円未満のときには1円に切り上げることとなります。
なお、この端数処理は、債務の弁済を現金で支払う時点で行うことから、雇用保険の被保険者負担額を賃金から源泉控除する場合には、事業主が被保険者に控除後の賃金を現金で支払う時点で端数処理を行うこととなるため、結果として50銭以下の場合は切り捨て、50銭1厘以上の場合は切り上げとなります。
ただし、これらの端数処理の取扱いは、労使の間で慣習的な取扱い等の特約がある場合にはこの限りではなく、例えば、従来切り捨てで行われていた場合、引き続き同様の取扱いを行ったとしても差し支えありません。
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4.成立手続を怠っていた場合
□成立手続を怠っていた場合の2つのケース
1.成立手続を行うよう指導を受けたにもかかわらず、自主的に成立手続を行わない事業主に対しては、行政庁の職権による成立手続及び労働保険料の認定決定を行うこととなります。その際は、遡って労働保険料を徴収するほか、併せて追徴金を徴収することとなります。
2.事業主が故意又は重大な過失により労災保険に係る保険関係成立届を提出していない期間中に労働災害が生じ、労災保険給付を行った場合は、事業主から遡って労働保険料を徴収(併せて追徴金を徴収)するほかに、労災保険給付に要した費用の全部又は一部を徴収することになります。
※労災保険未手続事業主に対する費用徴収制度が強化されました
事業主が故意または重大な過失により、労働保険への成立手続を行っていない期間中に労働災害が生じ、労災保険給付を行った場合、事業主から(1)~(2)を徴収することになっております。
(1) 最大2年間遡った労働保険料及び追徴金(10%)
(2) 故意又は過失により、労災保険給付額の40%又は100%
■費用徴収の実施例
A社では今まで労災事故を発生させたことがなく、また保険料の支払が負担になることから、労働保険(労災保険)の成立届手続を行っていなかった。
ところが、先般、従業員B(賃金日額1万円)が労災事故が原因で死亡し、遺族の方に対し労災保険給付として遺族補償一時金が支給された。
このようなケースでは、おおむね以下のとおり費用徴収が行われることとなります。
故意の場合
労災事故が起こる以前にA社が都道府県労働局の職員から労働保険(労災保険)の成立手続を行うように指導を受けていたにもかかわらず、その後も成立手続を行わなかった場合は、「故意」に成立手続を行わないものと認定され、保険給付額の100%の金額が費用徴収されることになります。
遺族補償一時金の額(10,000円(労働者の賃金日額)×1,000日分)×100%=10,000,000円
重大な過失の場合
A社について、労災保険の成立手続を行うよう指導を受けた事実はないものの、労災保険の適用事業となった時から1年を経過してなお手続を行わない場合には、「重大な過失」により手続を行わないものと認定され、保険給付額の40%の金額が費用徴収されることになります。
遺族補償一時金の額(10,000円(労働者の賃金日額)×1,000日分)×40%=4,000,000円
※この他にも、最大2年間遡った労働保険料及び追徴金(10%)を徴収することとなります。
まだ成立手続を行っていない事業主の方は、速やかに所在地を管轄する労働基準監督署又はハローワークへご相談ください。