■確定保険料・口座振替納付
1.確定保険料の申告・納付
(1) 継続事業(一括有期事業を含む)の申告期限(法19条1項)
① 前保険年度より保険関係を引き継ぐ場合の申告期限
保険年度の6月1日から起算して40日以内(7月10日まで)
② 保険年度の中途に保険関係が消滅した場合の申告期限
保険関係が消滅した日から起算して50日以内
【例】4月30日に事業が廃止された場合は、保険関係消滅日は5月1日となり、申告期
限は6月19日となる
③ 保険年度の中途に特別加入の承認が取り消された場合の申告期限
保険年度の中途に中小企業主等の特別加入の承認が取り消された事業に係る第1種特
別加入保険料及び海外派遣者の特別加入の承認が取り消された事業に係る第3種特別
加入保険料に関しては、それぞれ当該承認が取り消された日から50日以内
【参考】一括有期事業の場合
有期事業の一括により一括された個々の事業であって保険年度の末日において
終了していないものは、その保険年度の確定保険料の対象から除外し、次年度
の概算保険料の対象とする
【注意】確定保険料申告書は、納付した概算保険料の額が確定保険料の額以上の(納
付すべき労働保険料がない)場合でも提出しなければならない
(2) 有期事業の申告期限(法19条2項)
① 保険関係が消滅した場合の申告期限
保険関係が消滅した日から起算して50日以内
② 保険関係が消滅した日前に特別加入の承認が取り消された場合の申告期限
保険関係が消滅した日前に中小企業主等の特別加入の承認が取り消された事業に係る
第1種特別加入保険料に関しては、当該承認が取り消された日から50日以内
(3) 確定保険料の納期限(法19条3項)
事業主は、納付した保険料の額が確定保険料として申告した労働保険料の額に足りない
時はその不足額を、納付した労働保険料がない時は確定保険料として申告した労働保険
料を、確定保険料の申告書に添えて、有期事業以外の事業にあっては次の保険年度の6
月1日から40日以内(保険年度の中途に保険関係が消滅したものについては、当該保険
関係が消滅した日から50日以内)に、有期事業にあっては保険関係が消滅した日から50
日以内に納付しなければならない
(4) 申告・納付先(法19条3項、則33条2項、則38条)
① 納付すべき不足額等がある場合
「確定保険料申告書」にその不足額等を添えて所定の納付書により、申告・納付しな
ければならない
1) 確定保険料申告書の提出先
所轄都道府県労働局歳入徴収官(概算保険料申告書と同様の区分により、日本銀
行、年金事務所又は労働基準監督署を経由して提出することができる)
2) 不足額の納付先
概算保険料の納付先と同様の区分により、納付書により、日本銀行又は都道府県労
働局収入官吏若しくは労働基準監督署収入官吏に納付する
② 納付すべき不足額等がない場合
「確定保険料申告書」のみを、所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出(概算保険料申告
書と同様の区分により、年金事務所又は労働基準監督署を経由することができる)し
なければならない
【注意】
・確定保険料申告書のみを提出する場合(納付すべき労働保険料がない場合)は、日
本銀行を経由して行うことはできない
・確定保険料は延納することができない
(5) 還付・充当(法19条6項、則37条)
① 概要
事業主は、納付した概算保険料の額が確定保険料の額を超える場合には、その超える
額の還付を請求することができ、当該請求がない場合には、次の保険年度の概算保険
料等の徴収金に充当される
② 還付
超過額の還付請求は、確定保険料申告書を提出する際(確定保険料の認定決定が行わ
れた場合には、通知を受け取った日の翌日から起算して10日以内)に労働保険料還付
請求書を、官署支出官又は所轄都道府県労働局労働保険特別会計資金前渡官吏に提出
することによって行わなければならない
労働基準監督署を経由して申告・納付できる労働保険料*に係る還付請求の場合は、
所轄都道府県労働局長及び所轄労働基準監督署長を経由して官署支出官又は所轄労働
基準監督署長を経由して所轄都道府県労働局資金前渡官吏に提出することとされてい
る
* 具体的には、次の一般保険料並びに特別加入保険料である
1) 一元適用事業であって労働保険事務組合に事務処理を委託しない(雇用保険に係
る保険関係のみが成立している事業の除く)についての一般保険料
2) 労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち二元適用事業についての一
般保険料
3) 労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち二元適用事業についての第1
種特別加入保険料
4) 第2種特別加入保険料
5) 第3種特別加入保険料
③ 充当
還付請求がない場合には、超過額は次の年度の概算保険料又は未納の労働保険料、一
般拠出金等の徴収金に充当される
所轄都道府県労働局歳入徴収官が充当処理を行った場合には、その旨を事業主に通知
しなければならない
【参考】一般拠出金
「石綿による健康被害の救済に関する法律」により、石綿(アスベスト)健康被害者の
救済費用に充てるため、労災保険の適用事業の事業主が負担することとされた「一般
拠出金」の申告・納付が、平成19年4月1日から開始されている
1) 一般拠出金の額
賃金総額に(1,000円未満切捨)に一般拠出金率を乗じて得た額が一般拠出金額とな
る
なお、当該一般拠出金の料率は、業種を問わず一律1000分の0.05である
2) 納付方法
確定保険料の申告・納付と合わせて行う
当該一般拠出金には概算納付の仕組みはなく、確定納付のみの手続となる
3) その他
・ 労災保険のメリット制の対象事業であっても、当該一般拠出金については、メ
リット制は適用されない(一般拠出金率の割増や割引は行われない)
・ 当該一般拠出金については、延納(分割納付)はできない
・ 特別加入者や雇用保険のみの適用事業主は、当該一般拠出金の申告・納付の対
象外である
【ポイント】
・ 一般拠出金は、「労働保険料」ではない
・ 一般拠出金も充当の対象とされる
(6) 継続事業(一括有期事業を含む)の申告額
確定保険料として申告すべき労働保険料の額は、概算保険料の場合と同様、特別加入者
がいない事業においては、一般保険料の額となり、特別加入者がいる事業においては、
第1種又は第3種特別加入保険料の額を一般保険料の額に加えた額、第2種特別加入者に
係る事業においては第2種特別加入保険料の額となる
① 一般保険料額の原則(法19条1項1号)
確定保険料として申告すべき一般保険料の額は、その保険年度に使用したすべての労
働者(保険年度の中途に保険関係が成立し、又は消滅したものについては、その保険
年度において、当該保険関係が成立していた期間に使用したすべの労働者)に係る賃
金総額(その額に1,000円未満の端数がある時は、その端数は、切り捨てる)に当該事
業についての一般保険料率を乗じて算定した額とする
原則としての算式
一般保険料の額=賃金総額×一般保険料率
② 免除対象高年齢労働者を使用する場合の一般保険料額(法19条の2、令4条)
高年齢者免除額に係る事業の事業主が提出すべき確定保険料の申告書に記載する労働
保険料のうち一般保険料の額は、一般保険料の額からその保険年度に使用した高年齢
労働者(保険年度の中途に保険関係が成立し、又は消滅したものについては、その保
険年度において、当該保険関係が成立していた期間に使用したすべの高年齢労働者)
に係る高年齢者賃金総額(その額に1,000円未満の端数がある時は、その端数は、切
り捨てる)に雇用保険率を乗じて得た額を減じた額とする
免除対象高年齢労働者を使用する場合の算式
一般保険料の額=賃金総額×一般保険料率-高年齢者賃金総額×雇用保険率
③ 特別加入保険料額(法19条1項2号、3号)
確定保険料として申告すべき特別加入保険料は、特別加入保険料算定基礎額の総額
(1,000円未満の端数は、切り捨てる)に当該事業について第1種(第2種、第3種)特別
加入保険料率を乗じて得た額となる
第1種特別加入保険料額=特別加入保険料算定基礎額総額×第1種特別加入保険料率
第2種特別加入保険料額=特別加入保険料算定基礎額総額×第2種特別加入保険料率
第3種特別加入保険料額=特別加入保険料算定基礎額総額×第3種特別加入保険料率
(7)有期事業の申告額
① 一般保険料額(法19条2項1号)
有期事業については、確定保険料として申告すべき一般保険料の額は、その事業の保
険関係に係る全期間に使用したすべての労働者に係る賃金総額(その額に1,000円未
満の端数がある時は、その端数は、切り捨てる)に当該事業についての一般保険料率
を乗じて算定した額とする
一般保険料額の算式
一般保険料の額=賃金総額×一般保険料率(労災保険率)
② 特別加入保険料額(法19条2項2号、3号)
確定保険料として申告すべき第1種特別加入保険料の額は、特別加入の承認に係る全
期間における特別加入保険料算定基礎額の総額(1,000円未満の端数は、切り捨てる)
に当該事業についての第1種特別加入保険料率を乗じて得た額となる
また、確定保険料として申告すべき第2種特別加入保険料の額は、その事業の保険関
係に係る全期間における特別加入保険料算定基礎額の総額(1,000円未満の端数は、
切り捨てる)に当該事業についての第2種特別加入保険料率を乗じて得た額となる
なお、有期事業については、海外派遣者の特別加入は認められていないので、第3種
特別加入保険料という概念はない
第1種特別加入保険料額=特別加入保険料算定基礎額総額×第1種特別加入保険料率
第2種特別加入保険料額=特別加入保険料算定基礎額総額×第2種特別加入保険料率
(8) 確定保険料の認定決定
確定保険料についても、事業主が申告・納付を行わないとき等一定の場合には、政府
は、職権により、事業主が申告・納付すべき正しい確定保険料の額を決定し、事業主に
通知することとされている
① 認定決定事由及び納期限(法19条4項、5項)
1) 認定決定が行われる場合
次の場合に認定決定が行われる
・事業主が所定の期限までに確定保険料申告書を提出しないとき
・提出された確定保険料申告書の記載に誤りがあると認められるとき
2) 納期限
認定決定された確定保険料の納期限は、通知を受けた日の翌日から起算して15日
以内となる
なお、確定保険料の認定決定の通知は納入告知書により行われる
② 追徴金の徴収(法21条、則26条)
1) 追徴金の額
確定保険料の認定決定により労働保険料又はその不足額を納入しなければならない
場合は、追徴金が徴収される
追徴金の額は、納付すべき額(1,000円未満の端数は、切捨て)の10%である
2) 通知・納期限
追徴金の通知は、納入告知書で行われ、納期限は、通知を発する日から起算して
30日を経過した日である
3) 天災その他やむ得ない理由
法令の不知、営業の不振等は含まれない
2.口座振替による納付
(1) 口座振替による納付(法21条の2,1項)
① 口座振替の対象となる労働保険料
口座振替により納付することができるのは、納付書によって行われる次の労働保険料
である
1) 概算保険料(延納する場合も含む)
2) 確定保険料
② 口座振替による納付の申出
所轄都道府県労働局歳入徴収官に必要な書面を提出して行う
③ 申告・納付の流れ
口座振替による納付が承認された場合には、次のような流れで申告・納付が行われる
1) 事業主は、概算保険料申告書及び確定保険料申告書を、所轄都道府県労働局歳
入徴収官に提出する(この場合には日本銀行及び年金事務所を経由してするころ
はできない)
2) 申告書の提出を受けた所轄都道府県労働局歳入徴収官は、当該保険料の納付に
関し必要な事項について金融機関に電磁的記録を送付した時を除き、労働保険料
の納付に必要な納付書を当該事業主の預金口座又は貯金口座のある金融機関に送
付する
3) 納付書又は電磁的記録が送付された金融機関は口座振替により納付するが、納
付書又は電磁的記録が金融機関に到達した日から2取引日を経過した最初の取引
日までに納付されていれば、納付期限後であっても期限内に納付したとみなされ
る
この場合において、取引日とは金融機関の休日以外の日をいう
【注意】印紙保険料、追加徴収に係る概算保険料、認定決定された概算保険料又は確
定保険料、追徴金、増加概算保険料、特別納付保険料は、口座振替による納付
ができない
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