■遺族基礎年金
1.支給要件
原則:死亡日が新法施行日前(昭和61年3月31日以前)
旧国民年金法の死亡に係る給付を適用
死亡日が新法施行日以後(昭和61年4月1日以後)
新国民年金法の死亡に係る遺族基礎年金を適用
注意:母子年金、準母子年金、遺児年金は新法施行日以後も引き続き支給されて いる。しかし、母子福祉年金、準母子福祉年金は、新法施行日に遺族基礎
年金に裁定が得され、新法の年金として支給されている。
(1)死亡者の要件(法37条)
1)被保険者等要件
次のいずれかに該当する者の死亡(自殺を含む)
・被保険者
・被保険者であった者で日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の者
(昭和61年4月前に被用者年金に加入していた者を含む)
・老齢基礎年金の受給権者
・老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている者
*遺族基礎年金の支給要件の特例
大正15年4月1日以前に生まれた旧厚生年金又は旧船員保険法による障
害等級1・2級(船員の職務上災害に係る場合は1~5級)の障害年金又は
旧共済組合等が支給する障害等級1・2級の障害年金の受給権者が、昭
和61年4月1日以後に死亡した場合には、遺族基礎年金が支給される
2)保険料納付要件
① 原則
被保険者及び被保険者であった者で日本国内に住所を有する60歳以上65
歳未満の者の死亡については、死亡日の前日において、死亡日の属する
月の前々月までに被保険者期間があるときは、その被保険者期間に係る
保険料納付期間と保険料免除期間を合算した期間がその被保険者期間の
3分の2以上であること
② 経過措置
平成28年4月1日前の死亡については、死亡日の前日において、死亡日の
属する月の前々月までの1年間(当該死亡日において被保険者でなかった
者については、当該死亡日の属する月の前々月以前における直近の被保
険者期間に係る月までの1年間)のうちに保険料納付期間と保険料免除期
間以外の被保険者期間(滞納期間)がなければ、保険料納付要件は満たさ
れたものとされる(ただし、死亡日において65歳以上である者にはこの
経過措置は適用されない)
注意①:「保険料納付期間」には、被用者年金制度の加入期間のうち、昭和
36年前の期間、20歳未満及び60歳以後の期間も含まれる
注意②:「第3種被保険者の保険料納付期間」は実期間で計算する(3分の4倍
又は5分の6倍しない)
(2)遺族基礎年金の受給権者
1)遺族の範囲(法37条の2,1項)
遺族基礎年金を受けることができる妻又は子は、被保険者又は被保険者
であった者の妻又は子であって、被保険者又は被保険者であった者の死
亡の当時その者によって生計を維持し、かつ、次に掲げる要件に該当し
たものとする
① 妻については、被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その
者によって生計を維持し、かつ、②に掲げる要件に該当する子と生
計を同じくすること
② 子については、18歳に達する日以後の最初の3月31日まで間にある
か又は20歳未満であって障害等級に該当する障害の状態にあり、か
つ、現に婚姻をしていないこと
補足:事実婚の妻は遺族基礎年金を受給することができる遺族に含まれ
るが、死亡した被保険者又は被保険者であった者と養子縁組を
行っていない「事実上の子(妻の連れ子)」は受給できる遺族に含ま
れない(ただし、認知された子は遺族に含まれる)
通達①:生計維持関係
厚生労働大臣が定める額:年収850万円・年間所得655万5千円
以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外
通達②:生計同一に関する認定要件
・住民票上同一世帯
・住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一
・住所が住民票上異なっているが、次のいずれかに該当する場合
*現に起居を共にし、かつ、家計を一つにしている
*単身赴任、就学又は病気療養等の事情
2)胎児が生まれたときの取扱い(法37条の2,2項)
死亡当時胎児であった子が生まれた時は、将来に向かって、その子
は、被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者によって生計
を維持していた者とみなし、妻は、その者の死亡の当時その子と生計を
同じくしていたものとみなす
2.年金額
(1)年金額(法38条、法39条1項、法39条の2,1項)
(50円未満の端数は切り捨て、50円以上100円未満は100円に切り上げる)
1)妻と子が受給権者の場合*平成24年度現在
妻の年金額に子の数に応じて加算額が加算される
妻:786,500円
第1子:226,300円
第2子:226,300円
第3子以降:75,400円
2)子のみが受給権の場合*平成24年度現在
1人につき、基本年金額と加算額との合計額をこの数で除して得た額
第1子:786,500円
第2子:226,300円
第3子以降:75,400円
(2)年金額の改定
1)妻に支給する遺族基礎年金の年金額の改定
① 増額改定(法39条2項)
胎児が生まれた時は、その生まれた日の属する月の翌月から改定する
② 減額改定(法39条3項)
*妻に遺族基礎年金が支給されるのは少なくとも1人は加算対象とな
る子がいる場合であるので、子の全てが下記減額改定事由に該当し
た時は、妻の受給権は消滅することになる
・死亡
・婚姻(事実婚も含む)
・妻以外の者の養子になった時(事実上の養子縁組も含む)
・離縁
・妻と生計を同じくしなくなった時
・18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了した時(障害等級に該
当するときを除く)
・障害等級に該当する子について、その事情がやんだ時(18歳に達す
る日以後の最初の3月31日までの間を除く)
・20歳に達したとき
2)子に支給する遺族基礎年金の年金額の改定(法39条の2,2項)
子の数に増減生じた時は増減の生じた日の属する月の翌月から改定する
3.支給停止及び失権
(1)支給停止(法41条)
1)遺族補償による支給停止(法41条1項)
労働基準法の規定による遺族補償が行われるべきものである時は、死亡
日から6年間、その支給を停止する
2)子に対する遺族基礎年金の支給停止(法41条2項)
① 妻が受給権を有する時(妻の申出又は所在不明によりその支給が停止され
ている時を除く)
② 生計を同じくするその子の父又は母がある時
3)所在不明による支給停止(法41条の2、法42条1項、2項)
① 妻に対する遺族基礎年金は、その者の所在が1年以上明らかでない時
は、遺族基礎年金の受給権を有する子の申請によって、その所在が明ら
かでなくなった時にさかのぼって、その支給を停止する
② 妻は、いつでも前項の規定による支給の停止の解除を申請することがで
きる
③ 遺族基礎年金の受給権を有する子が2人以上ある場合においては、その
子のうち1人以上の子の所在が者の所在が1年以上明らかでない時は、
その子に対する遺族基礎年金は、他の子の申請によって、その所在が明
らかでなくなった時にさかのぼって、その支給を停止する
④ 前項の規定によって遺族基礎年金の支給を停止された子は、いつでも、
その支給の停止の解除を申請することができる
(2)失権
1)妻と子に共通の失権事由(法40条1項)
① 死亡
② 婚姻
③ 養子(直系血族または直系姻族の養子になったときを除く)
2)妻の失権事由(法40条2項)
すべての子が遺族基礎年金の減額改定事由に該当するに至った時
3)子の失権事由(法40条3項)
① 離縁
② 18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了した時(障害等級に該
当するときを除く)
③ 障害等級に該当する子について、その事情がやんだ時(18歳に達す
る日以後の最初の3月31日までの間を除く)
④ 20歳に達した時
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